三浦徹「地域研究と比較史:イスラームの都市社会」(講演原稿とスライド)
では、基本的には暴力集団である、やくざが、なぜ、政治的な混乱期に、都市や街区をにぎり、民衆の支持をうけたのでしょうか。これについて、私はこのような図をつかって説明をしています。政治支配者は、民衆を不正=ズルムから守ることで、みずからの支配を公正な(アドル)統治として正当化し、税を徴収します。しかし、政治支配者自身がズルムをするようになると、やくざが民衆を守る側にたち、その見返りとして保護料を徴収します。つまり、民衆からみれば、政治支配者であれ、やくざであれ、保護の見返りに税やお金をとっていくことでは同じであり、そのときどきで、頼りになるほうを選んだのでしょう。興味深いことは、15世紀のウラマーの著作に、「ズルムがなければ、アドルを知ることもない」という言葉があり、ズルムを絶対的に否定せず、アドルとのバランスで考えていることです。このような考え方も、やくざの存在をささえる心性につながっていたと思います。
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(2016年4月16日更新)