三浦徹「地域研究と比較史:イスラームの都市社会」(講演原稿とスライド)

スライド23

他方で、不動産を寄進するというワクフは、富裕なひとびとに限らず、一般の人びとにもひろがっていました。これは、16世紀にオスマン朝がダマスクス州のワクフを調査した台帳を分析した結果ですが、3冊の台帳に3200件の寄進文書の要約が記録され、15000の寄進された不動産が記載されています。寄進の目的は、宗教施設などへの慈善とともに、自分の一族を受益者とするものが4割から5割を占めていることが注目されます。また、寄進された不動産の8割は農業資源であり、そこからの収益が都市の宗教施設を支えていたことがわかります。ワクフは、農村と都市をむすぶ巨大な経済システムだったといえます。

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