三浦徹「地域研究と比較史:イスラームの都市社会」(講演原稿とスライド)

スライド29

15世紀末から16世紀にかけて、マムルーク朝という王朝の最後の50年間には、このような、ズールとよばれるやくざ者の活動が頻繁に記録されています。かれらは、略奪や暗殺など暴力行為を生業とする暴力集団ですが、同時に、都市や街区の防衛といった公的な役割を果たし、街区の商店からお金を徴集し、見返りに支配者の課税から店を守り、街区を支配していきます。1501年には、総督が頻繁に臨時の税を街区に課したため、ズールは民衆とともに決起し、総督の軍を破り、課税を撤回させるという「民衆反乱」が起こります。またある法学者=ウラマーは、ズルム=不正をなす者であれば、ズール=やくざ者を雇って殺害しても、罪にならない、という見解を発表したため、ズールをやとった暗殺事件がダマスクスで100件、サーリヒーヤで30件も起こります。これは、いかに不正行為をする支配層が多かったか、民衆がいかに苦しめられていたかを示しています。

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35

« »