トルコにおける資料調査及び資料収集

[期間]
2014年2月12日(水)~2月24日(月)
[国名]
トルコ共和国
[出張者]
佐々木紳(東京大学・研究員)
[概要]
本出張では、イスラーム地域研究東洋文庫拠点(TBIAS)における「イスラーム地域研究史資料の収集・利用の促進と史資料学の開拓」の業務の一部を遂行するために、トルコ共和国イスタンブルの主要図書館・研究施設にて史資料の調査および収集をおこなった。なお、当初は2月9日出発を予定していたが、降雪のため延期を余儀なくされ、3日遅れの出発となった。

史資料の調査として、まず、イスタンブル新市街の「アタテュルク図書館」(Atatürk Kitaplığı)で、オスマン時代に発行された定期刊行物、わけても1870年代以降さかんに刊行された「諷刺新聞」(mizah gazetesi)の残存状況、および一部の定期刊行物の内容を調査した。オスマン時代のメディア史・ジャーナリズム史研究では、近年、諷刺新聞を社会史や政治文化研究の史料として読み解こうとする新しい研究が陸続と出現している。これまで、行政文書や政論新聞の分析が中心であったオスマン近代史研究にあって、諷刺新聞も含めた利用史資料の多様化が、オスマン史研究のさらなる活性化を促すことはまちがいない。上記の研究動向をより詳細に把握すべく、イスタンブルのアジア側に位置する「イスラーム研究センター」(İSAM)、および市内の書店において、諷刺新聞やメディア史・ジャーナリズム史に関連する研究文献を収集・購入した。これらの成果は、TBIASのウェブサイトに開設されている「オスマン帝国史料解題」でいずれ紹介する予定である。

本出張では、史資料の調査・収集と平行して、やはりTBIASのウェブサイト上に開設されている「文書館・研究機関ガイド」のコンテンツを充実させるべく、イスタンブル新市街にある「イスラーム歴史・芸術・文化研究センター(IRCICA)図書館」を訪問して情報を収集した。同センターはイスラーム諸国会議機構(OIC)の下部組織であり、同図書館ではトルコ語文献のみならず、広くイスラーム地域研究に資する研究文献やレファレンスを、極めて快適な環境のもとで利用することができる(調査結果の詳細は、文書館・研究機関ガイドを参照)。

シリア・エジプト・イラクなどのアラブ地域での調査・研究が極めて困難な状況に置かれている現在、それらの地域をフィールドとしてきた研究者がトルコの図書館や研究施設を利用する機会も増えている。そうした人びとへの情報提供も兼ねて、今後もトルコ共和国における史資料調査・収集、および研究施設の紹介が継続的・網羅的におこなわれていくことを願ってやまない。

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