第8回「近代中央ユーラシア比較法制度史研究会」(2016/12/03-04)報告

科研費「近代中央ユーラシア地域における帝国統治の比較法制度・法社会史的研究」(基盤研究(B)・研究代表者:堀川徹)では、第8回「近代中央ユーラシア比較法制度史研究会」を開催しました。以下に報告を掲載いたします。

【実施報告】

2016年12月3日(土)と4日(日)の2日間にわたり、静岡市ふしみやにおいて近代中央ユーラシア比較法制度史研究会が開催された。同研究会は科学研究費補助金研究課題「近代中央ユーラシア地域における帝国統治の比較法制度・法社会史的研究」(基盤研究(B);研究代表者:堀川徹)の研究活動の一環として2013年いらい回を重ねてきており、今回の例会で8回を数えた。

堀川徹氏(京都外国語大学教授)が指揮してきた上記科研費研究課題は今年度が最終年度にあたっており、現在その研究分担者と研究協力者を中心とする執筆陣により成果論文集が準備中である。各論説執筆担当者による執筆経過報告を主目的とする本例会では、以下の11本の研究報告(例会での報告順に列挙)がおこなわれた。なお、各報告題目は成果論文集に掲載予定の各論説の題目に対応している。

【12月3日(土)】

磯貝健一(追手門学院大学国際教養学部・教授)
「帝政期トルキスタン地方のシャリーア法廷裁判文書:判決台帳と紙片状判決」

塩谷哲史(筑波大学人文社会系・助教)
「ロシア帝国統治期トルキスタンにおける水資源管理:アムダリヤ下流域の事例から」

矢島洋一(奈良女子大学研究院人文科学系・准教授)
「トルキスタン地方統治規程の改正」

額定其労(東京大学東洋文化研究所・准教授)
「二つの帝国に分かれて:清朝・ロシア統治下モンゴルの社会と司法」

承志(追手門学院大学国際教養学部・准教授)
「清帝国における「法」制度の素描」

田口宏二朗(大阪大学大学院文学研究科・准教授)
「南京の英国人:民国期の永租と不動産登記」

【12月4日(日)】

和崎聖日(中部大学全学共通教育部全学総合教育科・講師)
「現代ウズベキスタンの農村における女性と「法」:民事婚とニカーフの間で」

磯貝真澄(京都外国語大学外国語学部・非常勤講師)
「19世紀後半~20世紀初頭のヴォルガ・ウラル地域のムスリムの婚姻・離婚と「イスラーム法」」

塩野崎信也(関西学院大学文学部・日本学術振興会特別研究員)
「ロシア帝政期南東コーカサスにおけるシャリーア法廷の「仲裁」」

木村暁(京都外国語大学国際言語平和研究所・嘱託研究員)
「ブハラ・アミール国の法空間の変成:自存からロシア統治下へ」

高橋一彦(神戸市外国語大学外国語学部・准教授)
「総論(仮題)」

最初の報告者である磯貝健一氏は、成果論文集の編集を担当することから論集のテーマ(帝国における法の多元性、統治(司法・行政)制度の複合性)と編纂方針について説明をおこない、これをふまえながら磯貝氏以下、11名の執筆者が各論説の趣旨と執筆状況を報告した。いずれの論説も一次史料に密着した実証的研究の興味深い成果を提示するものであったといえる。最後の報告者である高橋一彦氏は、総論を担当することから論集全体を貫くべき視点(ミドル・レンジの視点)と分析枠組(法多元主義/多元的法体制ならびに外地法と植民政策論)を立脚点として示しつつ、各論説が意識し論究すべき重要な諸論点について明快に論じた。これは論集を有機的かつ有意に組み立てるための、いわば設計図の役割を果たすものである。個別の報告にさいしての質疑応答と議論、そして高橋氏の示した設計図により、各論説の課題の確認がなされたことは本例会の大きな収穫であろう。かくして本例会は、成果論文集編纂という建設事業におけるたしかな定礎の機会となった。

(文責:木村暁)

« »

[`evernote` not found]