オスマン史研究会(バーキー・テズジャン氏講演会)(2015/3/24)

NIHUプログラム・イスラーム地域研究東洋文庫拠点は、科研費基盤(B)「17~19世紀オスマン帝国における近代社会の形成」(研究代表者:秋葉)と共催で、オスマン史研究会(バーキー・テズジャン氏講演会)を下記の要領で開催しました。

【日時】:2015 年3月24日(火)16:00~18:00
【場所】:東洋文庫7階会議室(東京都文京区本駒込2-28-21)
【プログラム】
司会 秋葉淳(千葉大学文学部)
16:00-17:00 Baki Tezcan(カリフォルニア大学デイヴィス校准教授)
The Second Empire: Conceptualizing Early Modern Ottoman History without Decline
17:00~18:00 質疑応答・討論

【概要】
2015年3月24日、東洋文庫にてバーキー・テズジャン氏講演会が開催された。オスマン帝国史研究者を中心に、大学院生からベテランの研究者まで19名の参加者があった。

今回の講演は、多方面で反響を呼んだテズジャン氏の著書『第二オスマン帝国:近世世界における政治・社会的変容』(2010年刊)を、著者自身に語ってもらうものであった。氏は、著書の内容をあらためて6部に分け(序論と結論と第1〜6部)、著書で展開した議論のポイントを、スライドを使いながら解説した。ここでその解説全体を要約することはしないが、冒頭で、自己の議論の前提となった研究のうち、アブー=エル=ハッジを筆頭に挙げていたのが印象に残った。また、いわゆる「衰退論」に言及しつつ、単に「衰退がなかった」と反論するだけでは非生産的であって、焦点を国家から社会に移して社会経済的・文化的変容を論ずべきだと述べていたのも、共催の科研費による研究プロジェクトとも呼応するものと思われた。

講演の最後には、筆者のリクエストに応じて、著書の書評に対してのコメントも付け加えていただいた。氏によれば、今まで21本の書評が発表されており、そのほとんどが批判的であるという。そのなかで、ヨーロッパ史の概念を借用したことについて、氏は、もしヨーロッパ史の概念の中に利用可能な概念があれば、オスマン語の概念をそのままイタリックで使うよりも、読者に馴染みのある概念を使って説明する、と主張した。また、当時のオスマン社会に存在しなかった概念(absolutist やconstitutionalist など)であっても、分析の道具として積極的に使うべきであるとも述べた。

参加者からは、オスマン二世殺害の重要性、「第二帝国」と「第三帝国」との関係、 今後の研究の方向性などについて質問があり、それに対して氏による丁寧な応答があった。

(文責:秋葉淳)

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