アラビア文字資料司書連絡会(2014年度)

2015年3月12日、東洋文庫7階会議室において、2014年度のアラビア文字資料司書連絡会を行いました。

参加機関(順不同):アジア経済研究所図書館、大阪大学外国学図書館、京都大学AA研図書室、慶應義塾大学メディアセンター、国立国会図書館関西館アジア情報課、国立情報学研究所(NII)、NPO法人大学図書館支援機構(IAAL)、東京外国語大学附属図書館、東京大学東洋文化研究所図書室、東京大学文学部図書室、東北大学附属図書館、公益財団法人東洋文庫研究部イスラーム地域研究資料室(TBIAS)

【プログラム】
14:00 代表あいさつ
14:10 2014年度の現地語資料の収集・利用について:各機関の報告
15:00 「イスラーム地域研究資料の収集・整理・利用の状況と課題」(徳原靖浩)
16:00 2015年度の予定、その他
17:00 情報交換会(20:00 終了)

【概要報告】

3月12日(木)、イスラーム地域研究第2期の4回目となる連絡会が東洋文庫において開かれた。計12機関から、17名の参加があった。

はじめに、三浦徹拠点代表より、イスラーム地域研究第2期の終了(2016年3月)とその後の活動可能性、2015年9月に上智大学で開催予定のイスラーム地域研究東京国際会議、現在東洋文庫ミュージアムで開催されているイスラーム展日本における中東・イスラーム研究文献データベースの国際版の作成など、拠点の活動の近況について説明があった。

次に、NIIより提供の、アラビア語、ペルシア語、オスマントルコ語、トルコ語、ウルドゥー語(以下、「現地語資料」)の統計データについて、吉田幸苗氏より説明があった。これらの言語のNACSIS-CAT登録書誌に関してみると、複数館が同じ資料を所蔵している割合は低く、1館だけが所蔵している割合が高いということが確認された。続いて、各参加機関が2014年度の現地語資料の収集、利用等について報告を行った。各機関の報告を通して、継続的に現地語資料を購入していない館で数冊程度の現地語資料を受け入れたとき、整理をどうするか、作業者をいかに確保するかという問題があることが、例年のことであるが今年も浮き彫りになった。京都大学で整理中のモイーヌッディーン・アキール博士所蔵ウルドゥー語コレクション(総点数約3万冊)の整理に携わっている松井香織氏(京都大学)からは、ウルドゥー語の検索や整理に役立つノウハウやウェブサイトについて、実務作業者ならではの詳しい解説がなされた。

休憩を挟んで、徳原(東洋文庫拠点)より、イスラーム地域研究資料の収集・整理・利用の状況と課題について、報告を行った。報告では、写本のデジタルライブラリーが増えていることのほか、検索の問題として、NACSIS-CAT登録の現地語資料の書誌のうち、NDC(日本十進分類法)、DDC(デューイ十進分類法)、LCC(米国議会図書館分類表)、NDLC(国立国会図書館分類表)のいずれかの分類記号が付与されているものは3割前後しかなく、さらにその中でNDCの分類記号をもつものは2割強であること、したがってNDCの分類記号で検索できるものは1割にも満たないということを強調し、分類記号による検索では逆に資料が見つからないのではないかという懸念を指摘した。また、新たに刊行されたNDC新訂10版における「イスラム哲学」の扱いについて、従来の版における「アラビア哲学」を「イスラム哲学」に改めたことにより、同じ分野の本が時代によって「西洋哲学」と「東洋思想」の下位に分かれて分類されている点について違和感を述べた。

また、ディスカッションでは、国立国会図書館関西館においてアジア諸言語の資料収集や書誌作成の基礎知識に関する研修を開催するとしたら、どのような内容が適切かという問いかけに対し、各館から質問や意見が出され、多くの館が整理作業者の人材育成やノウハウの継承に関心を持っていることが分かった。例年より小さな会場だったことも幸いしてか、ざっくばらんに意見を交換・共有するという会の趣旨に見合った形で、実りある意見交換がなされた。

TBIASでは、連絡会で明らかになったニーズに対し、ウェブサイト上での情報の共有など可能な限りで対応してきた。今回も事前の質問にて各館からウェブサイトへの要望や意見を募り、多くの改良案をいただいた。この場を借りてお礼を申し上げるとともに、ウェブサイトの一層の充実と、アラビア文字資料を扱う図書館業務の課題を少しでも解消できるよう努力していきたい。

徳原靖浩

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