トルコにおける資料調査

[期間]
2012年3月4日〜3月10日
[国名]
トルコ
[出張者]
秋葉淳(千葉大学/東洋文庫)
[概要]
本出張では、イスタンブルの首相府オスマン文書館、イスラーム研究センターなどにおいて資料調査を行った。

今回の出張は7日間であったが、実質的に調査ができるのは4日半というタイトなスケジュールであった。それにもかかわらず、トルコの文書館、図書館が近年きわめて効率的に機能しているため、かなりの成果を挙げることができた。

まず、首相府オスマン文書館では、最近になってアンカラの国立図書館から移管され、パソコンで閲覧可能になったシャリーア法廷台帳の調査を行った。私が注目している18世紀後半のアンカラとトカトの台帳を中心に閲覧したが、マイクロフィルムをデジタル化したとはいえ、コントラストが強く調整されており、かつてマイクロフィルムから入手した画像よりも鮮明で、以前は判読不能だった部分も読み取ることができた。画面上で上下左右に動かす動作が遅いという難点はあるが、一点一点請求する必要もなく、見たい台帳を縦覧できる点で格段に利用しやすくなったと言える。今回は、i‘lâmという形式の文書がどの程度の頻度で記録されているのか、遺産分割の際の手数料の計算方法が変化したのはいつか、徴税時の手数料のレートが確定したのはいつか、といった点を確認することが重要な目的だったため、多数の台帳を閲覧する必要があった。短期間でそれができたのは新しいシステムだったからこそである。これらの成果の一部は次年度のオスマン文書セミナーで報告する予定である。

また、同文書館では1830-31年に実施された人口調査の台帳の調査も行った。これも近年まとまった形でデジタル化公開されたもので、朱の書き込みもあるのでカラー画像であるのは大変助かる。同様の台帳が1834年、1840年にも作成されていることも判明した。今回は、カーディーを多く輩出していたイブラドゥという町と、その近隣にあるギョデネ村の台帳を閲覧した。

イスラーム研究センター(İSAM)附属図書館では、主にイスタンブルのKısmet-iAskeriye法廷という、「アスケリー」階級(支配階級)の遺産を扱う法廷の台帳と、カザスケルの登録簿(Ruznamçe)という、カーディーの任命等を記録した帳簿を閲覧した。イスタンブルの諸シャリーア法廷の台帳はイスタンブル・ムフティー局附属文書館に所蔵されているが、これらは全てデジタル化されてİSAMで公開されている。İSAMは夜11時まで開館しているため、夜遅くまで仕事をすることが可能である(さすがに8時過ぎに疲れて帰ったが)。今回は、カーディーの遺産目録を調査することが目的で、10冊程度を調べることができた。また、İSAMで閲覧できるカザスケル登録簿は、元々イスタンブル・ムフティー局附属文書館に所蔵されているもののマイクロフィッシュである。この帳簿の冒頭に記録されている勅令などの控えを調べることが目的だったが、幸い一度に請求できる数は定められていないので、5, 6冊分を一度に閲覧して時間を有効に使うことができた。なお、その後、Bilgin Aydın氏(イスタンブル・メデニイェト大学)から、ムフティー局附属文書館が早くて来夏に再開されるという情報を得た。現在、所蔵の帳簿、文書を全て撮影しているとのことである。早期の公開を期待したい。

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