「論文を書く学生のための情報検索リテラシーセミナー」(2011/07/25)

NIHUイスラーム地域研究東洋文庫拠点・文部科学省委託事業「特色ある共同研究拠点の整備の推進事業」共催

去る2011年7月25日(月)、「論文を書く学生のための情報検索リテラシーセミナー」を行いました。以下の通り報告を掲載します。

[日時] 2011年7月25日(月) 13:00〜16:30
[場所] 財団法人東洋文庫 2階講演室 〒113-0021 文京区本駒込2-28-21

プログラム
13:00 開始
13:05〜13:30 論文作成の技法 三浦徹(東洋文庫拠点代表・お茶の水女子大学教授)
13:30〜14:20 セミナー1 「アラビア文字資料の検索と利用の仕方」 担当:徳原靖浩(人間文化研究機構/東洋文庫)
〜10分休憩〜
14:30〜15:20 セミナー2 「研究文献の検索と利用」 担当:後藤敦子(東洋文庫文部科学省拠点強化事業)
〜10分休憩〜
15:30〜16:30 東洋文庫閲覧の方法と書庫見学

[報告]

2011年7月25日に財団法人東洋文庫2階講演室において、NIHUイスラーム地域研究東洋文庫拠点は、文部科学省委託事業「特色ある共同研究拠点の整備の推進事業」と共催で「論文を書く学生のための情報検索リテラシーセミナー」を開催した。

イスラーム地域を研究対象とする学生を対象としたセミナーであったが、大学教員、図書館職員からも参加の希望があり、幅広い層の参加者が集まった。

最初のプログラム「論文作成の技法」(三浦徹・東洋文庫拠点代表、お茶の水女子大学文教育学部教授)では、まず史資料の収集と利用に関する東洋文庫拠点の位置づけについて説明がなされた後、講演者自身の学術論文「ダマスクス郊外の都市形成」を題材として、論文作成の方法がレクチャーされた。テーマ、史資料、方法、ツールといった研究に必要な要素を、料理に喩えつつ、研究のきっかけや、インターネットがなかった時代のカード目録による資料検索などの体験談も交えて行われた講演レクチャーに、受講者たちは熱心に耳を傾けていた。

次にセミナー1「アラビア文字資料の検索と利用の仕方」(徳原靖浩・人間文化研究機構地域研究推進センター機構研究員、東洋文庫研究員)が行われた。大学図書館のOPACやNACSIS-Webcatでアラビア文字資料を検索する際に、登録されているはずの資料が見つからないことが多々ある。この点を解き明かすため、ローマ字、アラビア文字それぞれの場合について、検索用インデックスの仕組みが説明された。

ローマ字で検索する際に定冠詞のalなどが検索に反映されないが、アラビア文字で検索する際には反映されるということや、翻字規則が研究者の用いるものとは違っていること、NACSIS-CATはアラビア文字での検索が可能な稀有なシステムであることなどが解説された。この際、受講者が実際にNACSIS-Webcatでアラビア文字による検索を行い、使い方を確認するとともに、検索の際の注意点やNACSIS-Webcatの特性なども学んだ。また、検索してヒットした書誌の所蔵レコードの見方や、相互貸借の仕方についても説明がなされ、受講者の理解が深められた。

休憩を挟んで、セミナー2「研究文献の検索と利用」(後藤敦子・文部科学省拠点強化事業担当)が行われた。「日本における中東研究文献DB」を使って研究動向を知る方法や、CiNii、カーリルといった検索ツールの解説がなされた。加えて、研究上で必要となることの多いイスラーム暦と西暦の変換が可能なプログラムや各種の辞典、資料アーカイヴなどのツールも紹介された。また、学界動向や先行研究を探すための書籍類も回覧され、受講者が興味深げに手に取る場面が見受けられた。インターネット上でのキーワード検索は調べたいことがはっきりしている場合には有効であるが、より広く情報を収集したい場合には文献目録も併用することも有用であるなど、両者の長所がそれぞれ強調された。

プログラムの最後に、東洋文庫の書庫見学と閲覧方法のガイダンスを行った。普段目にすることのないクルアーン写本(14世紀)やヴェラム文書(モロッコの皮革文書)などの貴重な資料や、中東諸言語の蔵書が直に閲覧され、受講者からも様々な質問がなされた。

全体として、アラビア文字資料を使って卒業論文・修士論文を書く受講者を対象としたセミナーとして盛りだくさんの内容であり、受講者のアンケート結果から、NACSIS-Webcatや東洋文庫のデータベースを利用した経験のない人もいたことがわかり、検索初心者にとって大変有意義なプログラムとなった。

加えて、セミナー当日のインターネットの接続状況が良くなかったこと、事前の応募メールが届かなかったことなど、今後の課題とすべき問題が確認された。次回の開催は未定であるが、今回の反省を踏まえつつ、このようなセミナーの開催を継続することで、学生や教員、図書館職員のイスラーム地域史資料の利用の促進に寄与することが期待される。

(文責:徳原靖浩)

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