カイロにおける図書館員ワークショップ参加

[期間]
2010年3月6日(土)~3月13日(土)
[国名]
エジプト・アラブ共和国 Maadi American International Center、米国議会図書館カイロ支部 他
[出張者]
柳谷あゆみ(人間文化研究機構 / 東洋文庫)
[概要]
本出張では、アラブ図書館情報ポータル「Cybrarians」が主催するMARC21(米加共通機械可読目録フォーマット)ワークショップ(会場:Maadi American International Center)に参加して、アラビア語圏である現地での書誌整理及びその研修方法を学び、関係者への取材を行った。

Cybrarians(URL: http://www.cybrarians.info/ 英文ページURL: http://www.en.cybrarians.info/)は、2002年にアラブ圏で初めて開設された図書館情報ポータルで、図書館司書のための情報やツールの作成・提供を目的とし、ArabicLISA(アラブ図書館情報雑誌目録DB)などのDBの構築・無償公開や、図書館員研修ワークショップを行っている。

今回参加したワークショップは、MARC21による書誌登録を基礎から学ぶもので、1日3時間で5日間(計15時間)にわたって実施され、終了時にはアラビア語と英語による修了証書が授与された(修了試験はないが、参加者は全日程出席を求められる)。講師は図書館情報学専攻の大学講師及び米国議会図書館カイロ支部で実際に目録業務に就いているカタロガーで、基礎理論の講義に、実例によるトレーニングを組み合わせたカリキュラムが組まれていた。
本ワークショップは外国人も参加可能だが、基本的にはカイロ在の図書館員を対象としており、外国人の参加費が米貨300ドルであるのに対し、エジプト人の参加費は300エジプト・リラ(約55ドル)と割安になっている。また、ワークショップは講義・質疑応答含めて大半がカイロ方言で進められる(テキストはフスハーで書かれている)。

面白いのはワークショップの告知と参加の仮申し込みが、ソーシャル・ネットワーク・サービスFacebookで行われていたことである。ワークショップなどのイベントの告知は、CybrariansサイトよりむしろFacebookでの方が積極的に行われている印象を受けた。この場合、Facebookのユーザーで、Cybrariansのグループに登録していれば、更新通知がメールで送られてくるので見逃しも少なく、クリック一つで参加表明(申し込み自体は個別にメールで行う)が出来る。また、ワークショップ終了後もFacebookを介して簡単に参加者同士で連絡を取り合うことが出来、後の交流へとつながっていく。図書館員へのSNS普及に負うところが大きいが、有効な利用法だと思った。

cairo103006_1 参加者はワークショップ開催中も大学図書館や学校図書館の司書業務についているので、このワークショップは夕方の5時から8時まで行われていた。講師自身も自分の通常業務を終えてから出講するため、地方での開催の場合は2日間で規定内容を教えたりすることもあるという。

ワークショップ自体は、基本的には日本国内でのMARC21の研修と大きな違いはないが、4日目に特に「古典の登録法」が取り上げられたのが、現場に対応した特色とみられよう。
アラブの古典では、注釈や補遺が一つの著作として成立することが多く、これらの著作の書誌をとる場合には元となる著作についてもデータを反映する必要がある。

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ワークショップでは、(1)著作に補遺や注釈が付されているもの(2)注釈書(3)補遺(4)補遺や注釈が一つの著作として成立しておりそれに元の著作が付されているもの、の四通りについての登録方法が実例とともに解説された。参加者も書誌登録の場でこれらの資料に接することが多く、活発な質疑応答が交わされていた。
出張者個人としても、アラビア文字資料整理担当者ミーティング(2010年3月5日開催)にて話題に出た「出版地不明」([S.l.])などのアラビア語略号が実際に各図書館の書誌登録の現場で使われていることなどが確認でき、テクニカルな点を含めて収穫の多いワークショップだった。

出張期間中に米国議会図書館カイロ支部長William J. Kopycki氏と面会し、アラビア文字言語の書誌整理について意見交換を行った。
興味深い話題では、米国議会図書館で実施している「中東資料共同購入プログラム(MECAP: Middle East Cooperative Acquisitions Program)」の説明があった。このプログラムは、従来個々の館で個別に行ってきた資料の収集と選書を(参加館の方針と予算に合わせて)一括して行うもので、日本の機関でも参加は可能である。中東地域全般に関する、アラビア語、トルコ語、クルド語、アルメニア語、英語、フランス語による新刊資料(逐次刊行物・DVDを含む)が収集対象なので、古典や翻訳の収集には向かないが、プログラムを通して購入した資料にはMARC21による書誌データが付されているためオリジナルで書誌を作成する必要がなく、収集・選書・書誌整理にかかる負担はかなり軽減されることになる。
詳細は米国議会図書館サイト(URL: http://www.loc.gov/acq/ovop/cairo)にも掲載されている。

また、同氏よりAnglo American Cataloguing Rules 2nd. ed. (『英米目録規則』第二版)のアラビア語訳の版元を紹介いただき、同日購入することが出来た。『英米目録規則』第二版アラビア語訳Qawāʻid al-fihrist al-Anjilū-Amrīkīyahの最新版は2005年に改訂されたもので、二巻巻末に前述の略号アラビア語訳の一覧が付されている。一般書店では扱いの少ない資料だが、版元(al-Dār al-Miṣrīyah al-Lubnānīyah)に直接出向くか、版元サイト(www.almasriah.com)を通して購入が可能である。価格は150エジプト・リラ(約3000円。2010年3月現在)だった。

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