「シャリーアと近代:オスマン民法典研究会」第12回研究会(2010/01/24)

研究班「シャリーアと近代:オスマン民法典研究会」は、オスマン民法典(メジェッレ)のアラビア語訳の講読および翻訳作成を最終目的として、研究を進めています。

下記の通り、第12回目の研究会および会合を行いました。

[日時]  2010年1月24日(日) 13:00~18:00
[会場] 東洋文庫イスラーム地域研究資料室
会場アクセス       ※東洋文庫本館とは別建物です。ご注意下さい。
[道順]駒込駅から本郷通りを六義園方面へと直進し、ampmを通過したあたりにあるビルです。 1階に日本直販が入っています。入口は、建物の右側裏手にあります。やや判りにくいので、迷われたときには事務所までご連絡下さい。
[報告]  メジェッレ翻訳案 第197条~
[概要]
第12回研究会では、松山洋平氏と奥田敦氏により準備された試訳に基づき、第2章第1節(第197条~第204条)、及び第2節の初めの6条(第205条~第210条)の翻訳を行った。
本研究会では、底本として用いるアラビア語のテキストの他、オスマン語のテキスト、アリー・ハイダル、ルスタム・バーズ等の著した注釈書を参照してきたが、特に今回の検討範囲において、条文の文言が資料によって異なる箇所が目立った。その場合、基本的には底本に従う方針が確認された。
日本語の問題としては、「場合」と「とき」、「並びに」と「及び」の使い分け、動詞と名詞における送り仮名の違い等に関して、可能な限り日本民法に倣うことが提案された。
個々の用語の訳については、以下の通りである。مبيع は「売買目的物」、تسليم は「引渡し」、باع は「売却した」、اشترى は「購入した」、مجلس البيع は「契約締結の場」で統一する。第209条のناد については、遺失物法12条に倣って「逸走」とする。صحيح、فاسد、باطل は、これまで通り柳橋博之「イスラーム財産法の成立と変容」に従い、それぞれ「不成立」、「無効」、「適正」とする。前二者に関しては日本民法における不成立や無効の概念との異同を問題とする向きもあろうが、そもそも法体系が異なるのであるから、同じ「無効」でもイスラーム法と日本法では要件・効果において差異があることは、訳文を読む側も当然認識しておくべきであろう。
規定の内容に関して、第210条の「財とされない物の売却」と「〔財とされない物〕と引換えになす〔財の〕購入」は同じ行為を意味しないかとの疑問が参加者の一部から呈せられたが、この点については次回、第211条と第212条の検討において明らかにされるはずである。

文責 浜本一典(同志社大学神学研究科博士後期課程)

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