ワークショップ “Japonya’da Sohbet-i Osmaniye”

イスラーム地域研究・東洋文庫拠点は、ギュルル・ネジプオール、ジェマル・カファダル両教授(ハーヴァード大学)をお迎えしてオスマン帝国史研究のワークショップを開催いたしました。

[報告者] 秋葉淳(千葉大学)、小笠原弘幸(日本学術振興会)、澤井一彰(東京大学)、長谷部圭彦(東京大学)、上野雅由樹(東京大学)
[コメンテーター]ギュルル・ネジプオール Prof. Gulru Necipoglu、ジェマル・カファダル Prof. Cemal Kafadar

[日時]2009年3月20日(金)16:00-18:00
[場所] イスラーム地域研究東洋文庫拠点(東洋文庫研究部イスラーム地域研究資料室)
[使用言語]トルコ語 ※通訳あり
[概要]
このたびハーヴァード大学のギュルル・ネジプオール、ジェマル・カファダル両教授を日本にお迎えするにあたって、単に二人の講演を聴くだけでなく、研究会のような雰囲気の中でオスマン史研究上の諸問題について親しく意見を交換する場を設けたいと考え、このワークショップを企画した(トルコ語のタイトルは強いて日本語訳すれば、「オスマン史をめぐる日本での談話会」)。報告者は博士論文を既に提出したか執筆中の若手オスマン史研究者で、各自の報告に対してネジプオール・カファダル両氏がコメントするという形式で進められた。参加者は9名。

まず、秋葉が「日本におけるオスマン史研究」と題する報告を行い、最初の接触、先駆、確立期、後の世代、オスマン-中央アジア(コーカサス)関係史、そして新しい研究、に項目分けして代表的な研究(とくに外国語で書かれたもの)を紹介した。

090320 これ以後の報告は、各報告者のこれまでの研究業績および今後の研究計画にかんするものである。秋葉は、「カーディーたち、ソフタ(マドラサ学生)たち、そして ‘Other Riffraff’」と題して自分の関心のありかについて説明した。
小笠原氏は、自身の博士論文と既発表論文の内容を要約して報告した。澤井氏は、「16世紀後半における東地中海における穀物問題とイスタンブルへの食糧供給」と題して、既発表論文に加えて、執筆中の博士論文の概要を説明した。長谷部氏は「オスマン帝国における教育改革:構想と現実」という、執筆中の博士論文の概要を述べた。最後に上野氏が、「タンズィマート期イスタンブルのアルメニア総主教座」と題する博士論文構想を発表した。

以上の各報告に対して、ネジプオール、カファダル両氏は大きな関心を寄せ、質問やコメントを述べた。それらから多くの重要な示唆が得られたが、小笠原報告に関してオスマン史家のモンゴルのとらえ方についてのカファダル氏のコメントや、澤井報告に関して複数の指標を用いた人口推定の方法についてのネジプオール氏のコメントなどがとくに印象に残っている。

カファダル、ネジプオール両氏は、北米におけるオスマン史、オスマン美術史(イスラーム美術史)を牽引する存在であり、そのような二人と報告者各自が自身の研究テーマについて議論ができたことは、大変貴重な経験であり、また有益であった。また、日本においてオスマン史研究の相当の蓄積があり、現在もさまざまなテーマの研究が進行中であることに両氏は感銘を受けていたようである。今後も外国人研究者を招いたときは、このような会を催して意見交換と交流の場をつくりたいと思う。なお、今回のワークショップは企画が直前に立てられたために、多方面に充分な連絡ができなかったことを企画者としてお詫びしたい。

文責 秋葉淳(千葉大学文学部)

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