アラビア文字図書DB連絡会(2007年度)

[日時] 2008年3月13日(木) 14:00-16:00
[場所](財) 東洋文庫3階講演室
[参加機関]

お茶の水女子大学 / 九州大学文系合同図書室 / 京都大学アジア・アフリカ研究科図書室 / 慶應義塾大学メディアセンター整理課 / 国立国会図書館関西館アジア情報課 / 国立情報学研究所 / 東京外国語大学附属図書館 / 東京大学文学部図書館人文社会系研究科図書室 / 東京大学東洋文化研究所 / 東北大学附属図書館情報管理課 / 東洋文庫図書部 / 東洋文庫研究部イスラーム地域研究資料室

目次(クリックすると、当該部分にジャンプします)

[報告]「日本におけるアラビア文字資料の所蔵及び整理状況の調査」アンケート中間報告
[報告] NACSIS-CATにおけるアラビア文字資料の登録状況(平成19年度)
[各館報告]目録・整理業務担当者の研修
[各館報告]目録・整理業務担当者使用のマニュアル・ツール・サイト
[各館報告]アラビア文字資料入力・整理担当者のマニュアル・ツール・サイト
[報告]東洋文庫イスラーム地域研究資料室ツール案

本連絡会は、昨年度に開催したアラビア文字図書DB連絡会準備会議の成果を受け、今年度より開催するものである。今年度はアラビア文字図書整理に関する実務的な情報の交換を主目的として各機関に報告を依頼し、以下の通り進行した。

最初に、三浦徹イスラーム地域研究資料室室長より、本連絡会の趣旨とNIHUプログラム「イスラーム地域研究」の進行について説明があり、続いて報告に移った。

[報告] 「日本におけるアラビア文字資料の所蔵及び整理状況の調査」アンケート中間報告 / 東洋文庫研究部イスラーム地域研究資料室

 

東洋文庫イスラーム地域研究資料室は19年度11月より実施した「日本におけるアラビア文字資料の所蔵及び整理状況の調査」アンケートの中間報告を行い、日本国内のアラビア文字所蔵館および整理実態について報告時点でのデータを提示した。

※本調査結果については、最終的なデータ確認及び分析が終了次第、東洋文庫研究部イスラーム地域研究資料室サイトおよび冊子体にて成果の公表を予定している。

回答270機関中、アラビア文字資料を所有しているのは96機関(注:中間報告当時の数字)で、97年調査結果(非アラビア文字を含め、所蔵館数96)と比較しても、収書の拡大・増加が認められる。

また整理状況については、所蔵館の約8割がアラビア語資料について「ほぼ全部整理されている」と回答しており比較的良好といえるが、目録DB化の進行と整理業務の外注の増加に伴い、アラビア文字資料は、収書計画・整理ともに担当司書のコントロール下にない実態が推察される。

この状況を踏まえ、今後は整理作業者に資する補助ツールの開発などの支援事業の必要性が指摘された。

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[報告] NACSIS-CATにおけるアラビア文字資料の登録状況(平成19年度)/ 国立情報学研究所コンテンツ課

国立情報学研究所コンテンツ課は「NACSIS-CATにおけるアラビア文字資料の登録状況(平成19年度)」と題し、アラビア文字資料整理の推進および支援事業(具体的には遡及入力事業と19年度に発表された外注仕様書)について報告を行った。概略は以下の通り。

アラビア文字資料の遡及事業は現時点では一つ山場を越えた状況にあり、一定の成果を挙げてきたことが確認された。また、平成19年度に目録業務を外注する機関向けに作成・公開した外注仕様書モデルを紹介・説明した。
[参照] >>目録業務外注モデル

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[報告] アラビア文字資料整理のための補助ツールについて:報告と協議

1.各機関報告
アラビア文字資料整理支援(研修と補助ツール)については全参加機関が報告を行い、補助ツールや情報サイト、研究者によるアラビア語研修など多様な機関の状況に応じた支援策が紹介された。
(1)(アラビア文字に限らず)目録・整理業務担当者(非常勤を含む)を対象とした研修の有無及びその概要

■目録業務研修

  • 国立情報学研究所開催の目録システム講習に参加。(九州大学・東北大学・国立国会図書館関西館アジア情報課・東京大学文学部図書室・東京大学東洋文化研究所・京都大学)
  • 言語別に常勤職員の担当者が決まっており、担当の常勤職員が対応できない言語については非常勤職員を雇用している。
  • 非常勤職員に対して常勤職員が書誌登録の方法を教えている(統一した教授法はなく、各人によって教え方は異なる)。研修進行状況表によって、進行が確認できる。(東京外国語大学)
  • 機関内の図書館業務研修が年に1回(1日程度のもの)ある。(京都大学)
  • 目録担当者で形成しているWGが目録講習会を年に1回程度開催している。(東京大学文学部図書室)
  • 非常勤職員が中心なので、ベテランの非常勤職員が個々に教授している。(東洋文庫図書部)
  • 2週間程度、目録作成と添削による指導を行い、入力開始後は専ら点検作業者が入力点検と同時に指導を行っている。(東洋文庫イスラーム地域研究資料室)
  • OJT(On-the-Job Training)が中心。(国立国会図書館関西館アジア情報課)
  • 有識者に整理・入力を担当してもらっているが、新規にお願いする方の場合はMARC21や翻字法などのトレーニングを実施している。(慶應義塾大学)

■言語など専門に関わる研修

  • アラビア文字言語を理解できる職員がゼロになったため、大学の研究者を教師に迎え、図書室を挙げて約1年間のアラビア語研修を実施した。
  • 毎週1.5時間(勤務時間内)を研修時間に当て、常勤職員全員と一部非常勤職員が文法を一通り学習し、実際の資料から書誌を読み取る実践的なトレーニングも行った。
  • 改修による長期休館中という現況から比較的時間の都合がついて実現した試みではあるが、文字に対する違和感がなくなり、リストとタイトルの照合等が出来るようになったという効用があった。同様の試みは漢籍でも行っている。
  • 今後の課題は、人事異動によって職員構成が変化する中、どこまでこの方法で対応できるかという点である。(東京大学東洋文化研究所)
  • 職員を対象に目録を取るのに最低限必要なレベルの語学研修(3日間:10時間。19年度はタイ語)を大阪大学外国語学部の教員を講師に迎え、今年度より実施した。(国立国会図書館関西館アジア情報課)
  • 職員が大学学部の語学クラスを一年間聴講できるシステムがある。(東京大学文学部、東京大学東洋文化研究所)
  • アジア情報研修(アラビア文字については平成18年度に実施)を実施している。(国立国会図書館関西館アジア情報課)

[参照] >>アジア情報研修    ※他機関からの参加も可能

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(2)担当者が使用している(あるいは使用を指示している)マニュアル、ツール、サイト

■マニュアル

  • 国立情報学研究所コーディングマニュアル(九州大学、国立国会図書館関西館アジア情報課、東京外国語大学、東洋文庫研究部イスラーム地域研究資料室)
  • 英米目録規則第二版(国立国会図書館関西館アジア情報課、九州大学、京都大学、東京外国語大学、慶應義塾大学、東洋文庫研究部イスラーム地域研究資料室)
  • 『目録情報の基準』第四版(東京外国語大学)
  • AACRII(『英米目録規則』第二版原語版。留学生が作業することがあるので、原語版も常備している)(京都大学)
  • 言語によっては、作業者が作成した用語集など覚書を参照している(国立国会図書館関西館アジア情報課)

■ツール

  • 国外OPAC、無料オンライン辞書など(九州大学)
  • 「オンラインシステム・ニュースレター抜刷集 No.1-No.55」(学術情報センター, 1996)(東京外国語大学)
  • ALA-LC Romanization tables, 1997 ed., Library of Congress, 1997(東京外国語大学)
  • 『言語学大辞典』(三省堂, 1988-2001)(東京外国語大学)
  • The Unicode standard 5.0, Addison-Wesley, 2006.(東京外国語大学) ※Unicode番号を調べるためのツールとして使用

■ウェブサイト

  • 目録担当者WGで作成しているポータルサイト(内部公開のみ)。(東京大学文学部)
  •  国立情報学研究所 目録所在情報サービス(東京外国語大学)
  • MARC Code Lists (東京外国語大学・東洋文庫イスラーム地域研究資料室) >>国別コード >>言語コード
  • Ethnologue (東京外国語大学) ※コーディングマニュアルのコード表にない言語について、系統関係を調べるために使用する
  • VernaC入力支援システム (東京外国語大学) 原綴→LC翻字、LC翻字→原綴への変換システム ※アラビア語の原綴→LC翻字への変換には母音記号の付与が必要

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(3)アラビア文字の入力・整理担当者が使用しているツール・サイト

■ツール
1. 人名の調査に使用するもの
<古典>
Encyclopaedia of Islam, New ed. — Leiden : Brill, 1995 (東京外国語大学・東洋文庫イスラーム地域研究資料室)
E.J.Brill’s first encyclopaedia of Islam, 1913-1936. — Leiden ; New York : E. J. Brill, 1987 (東京外国語大学)
Geschichte der arabischen Litteratur / C. Brockelmann. – Leiden : Brill.(東洋文庫イスラーム地域研究資料室)
<現代アラブ世界>
Who’s who in the Arab world, Beirut, Lebanon : Publitec Publications, [197-]-. (東京外国語大学)
<イラン>
فهرست مستند اسامی مشاهیر و مؤلفان، تهران : کتابخانه ملی جمهوری اسلامی ایران
=The Name Authority List of Authors and Famous People, 1997, 2v. (東京外国語大学・東洋文庫図書部)
※東京外国語大学図書館では本書の和訳を作成。余部提供可能とのお知らせをいただいた。
<イスラーム関係>
Concise biographical companion to index Islamicus : and international who’s who in Islamic Studies from its
beginnings down to the twentieth century : bio-bibliographical supplement to index Islamicus, 1665-1980 / by Wolfgang Behn, Leiden : Brill, 2004-2006, 3 v. (東京外国語大学)

2. オスマン語関連
<図書書誌情報>
Eski harflerle basılmış Türkçe eserler kataloğu / [hazırlıyan], M. Seyfettin Özege. — İstanbul : Fatih Yayınevi, 1971-1979, 5 v. (東京外国語大学・東洋文庫イスラーム地域研究資料室)
İstanbul Üniversitesi Kütüphanesi Türkçe Basmalar Alfabe Kataloğu / Fehmi Edhem Karatay. —  İstanbul, 1956, 2 v.(東洋文庫イスラーム地域研究資料室)
<財務暦を調べる場合>
Hicrî tarihleri Milâdî tarihe çevirme kılavuzu / Faik Reşit Unat 6. baskı, Ankara : Türk Tarih Kurumu Basımevi, 1988.(東京外国語大学)

3. 専門用語等
<イスラーム一般>
『新イスラーム事典』(平凡社, 2002) (東京外国語大学・東洋文庫イスラーム地域研究資料室)
『岩波イスラーム辞典』(岩波書店, 2002)(東洋文庫イスラーム地域研究資料室)
<南アジア一般>
『新訂増補 南アジアを知る事典』第二刷(平凡社, 2003)(東京外国語大学)

4. 辞書(東洋文庫イスラーム地域研究資料室)
1)アラビア語
A dictionary of modern written Arabic, 4th ed. / Hans Wehr ; ed. by J Milton Cowan. – Urbana : Spoken Language Services, 1994.
A Learners Arabic-English dictionary / by F. Steingass. – Beirut : Libraire du Liban, 1989.
al-Munjid fi al-lughah wa-al-aʻlām. – Beirut : Dar al-Mashriq.
※人名辞典もついているので、人名検索でも使える。
2)ペルシア語
新ペルシア語大辞典 / 黒柳恒男. – 東京 : 大学書林, 2002.
A comprehensive Persian-English dictionary / F. Steingass
Lughatnāmah-i Dihkhudā. 16 v. – Tehran
Farhang-i buzurg-i Sukhan. 8 v. – Tehran
3)オスマントルコ語
Redhouse yeni Türkçe-İngilizce sözlük, 1968.

■サイト
1. 書誌情報全般
< 図書館目録及び書誌ユーティリティ>
1) OCLC(Online Computer Library Center: 米国の書誌ユーティリティ)
>>OCLC catalogue (World Cat)(東京外国語大学・東洋文庫イスラーム地域研究資料室)
2) COPAC (英国・アイルランドの学術専門図書館及び国立図書館のオンラインカタログ)
>>Copac academic and national library catalogue
(major University and National Libraries in the UK and Ireland, including the British Library)
(東京外国語大学)
3) 米国議会図書館オンラインカタログ
>>Library of Congress Online Catalogue(国立国会図書館関西館・東洋文庫イスラーム地域研究資料室)
4) ハーヴァード大学図書館目録
Harvard University Library catalogue(東京外国語大学・国立国会図書館関西館)
5) ロンドン大学東洋アフリカ学研究所(SOAS)図書館 ※主としてペルシア語・ウルドゥー語書誌整理に使用
The School of Oriental and African Studies (SOAS) Library, college of the University of London(東京外国語大学)
6) トルコ共和国国民図書館※トルコ語・オスマントルコ語書誌整理に使用(東洋文庫イスラーム地域研究資料室)

<その他>
1) 大阪外国語大学(現・大阪大学外国語学部)職員用HP(内部向けだが、外部からも閲覧出来る)(京都大学)
2) ALA-LC Romanization tables(東京外国語大学、九州大学)
※米国議会図書館採用の非ローマ字言語翻字法の表
3) 国立国会図書館関西館アジア情報課サイト内Asia Links(国立国会図書館関西館)

2. 地理情報(東洋文庫イスラーム地域研究資料室)
テキサス大学中東地図コレクション

3. 暦法(東京外国語大学)

1) 太陰暦(イスラーム暦=ヒジュラ暦)
2) イラン太陽暦
3) バハーイー暦
>>日本語版
>>英語版

4. ウルドゥー語書誌整理関連(東京外国語大学)
<書誌>
1) シカゴ大学図書館 University of Chicago Library
2) ロンドン大学東洋アフリカ学研究所(SOAS)図書館
The School of Oriental and African Studies , Library, college of the University of London

<人名>
1) コロンビア大学A. Sean Sue氏作成資料
<ウルドゥー文学に関するリンク集>
>>リンク集

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2.報告:東洋文庫イスラーム地域研究資料室ツール案 / 東洋文庫研究部イスラーム地域研究資料室

東洋文庫イスラーム地域研究資料室は拠点サイトにて公開を開始した補助ツール( イスラーム地域資料参考・解説集 )とこれからの開発案を紹介し、今後は要望を反映する形で補助ツール開発による整理支援を推進していくことを述べた。

開発案として紹介された試作品(パワーポイント)を以下に掲載する。
>>欄外注の見方(ダウンロード)

最後の総合討議では、アラビア文字諸言語を専門とする人間をより安定した状況(例えば任期付常勤など)で雇用する余地はあるかという質問や、ヘブライ語などアラビア文字に限らない多言語 資料の登録に向けた国立情報学研究所での受け入れ体制についての質問(補記参照)、ルールセッティングの必要性の指摘など活発な議論が展開された。

[補記]アラビア文字に限らない多言語資料(ヘブライ語、アムハラ語など)の登録については、確実な回答のため調査を要するので連絡会当日は回答が保留された。連絡会後、国立情報学研究所コンテンツ課からの回答を以下に掲載する。

Q1 UTF-8に文字がある言語の原綴による書誌登録は行えるのか。
A1 行えます。
ただし、NIIは明確にこの方針を示していないことをこの度のご指摘により理解しました。一般ルールの解説を加えて方針を公開したいと思いますので、しばらくお待ちいただけますでしょうか。
Q2 自由に入力できると言うが、どのフィールドにどの情報を入れるかなど決めることが必要ではないか。アラビア語、タイ語とそうやって決めてきた。
A2 NACSIS-CATの多言語対応後、規定がないと運用できないものについて整備を行ってきました。主な言語の整備は終了したとの認識を持っておりますが、A1で公開される方針では対応できない言語がございましたら今後、ご教示いただければ幸いです。
Q3 包摂はどうするのか。
A3 包摂やインデクスなど、システム的な解決が必要なものは上記運用方針による対応とは別に検討いたしますので、こちらもご教示いただければ幸いです。
また、ロシア語のローマ字翻字については、VT:RMに記入する現在の運用で間違いありません。

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文責 柳谷あゆみ(人間文化研究機構/東洋文庫)

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