第22回「近代中央ユーラシア比較法制度史研究会」(2024/6/15~16)報告
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第22回近代中央ユーラシア比較法制度史研究会が、科研費(基盤研究(B))「ロシア帝国領中央ユーラシアにおける家族と家産継承」(研究代表者:磯貝健一)により開催されました。その実施報告を掲載します。
【概要】
2024年6月15・16日(土・日)に、第22回近代中央ユーラシア比較法制度史研究会が、京都大学文学研究科附属文化遺産学・人文知連携センター羽田記念館での対面とオンライン(Zoomミーティング)を併用したハイブリッド形式で開催された。15日には「トルキスタン統治規程」研究会と磯貝健一氏(京都大学大学院文学研究科)による研究報告が行われた。対面参加者は12名、オンライン参加者は10名であった。
前半の「トルキスタン統治規程」研究会では、第21条から第25条までの訳文検討が行われた。今回で第1編第1章の確認がひとまず終わり、第1編第2章に入ることとなった。
後半は、磯貝健一氏により「帝政期サマルカンドとフェルガナ盆地のファトワーと法廷台帳:家族関連事案を中心に」と題する研究報告がなされた。本報告は、20世紀初頭の両地域のファトワー文書(計152点)とシャリーア法廷判決台帳に記録される判決(計118件)について、それぞれの史料的特性をふまえつつ、家族関連事案(当事者双方が同じ親族・姻族集団に属する事案)に着目して数量的分析を行うものであった。特に、ファトワーの典拠、両史料における家族関連事案のあらわれ方とその差異、判決台帳におけるファトワーの記録のされ方に焦点があてられた。
磯貝氏はまずファトワーに引用される学説の特徴と傾向を示し、当時の中央アジアでは法学説の標準化が進んでいたことを指摘した。続いて、判決台帳における家族関連事案の割合が、ファトワー文書のそれよりも低くなった理由を、訴訟に関わりのないファトワーも含まれていること、家族関連の訴訟は和解となるケースが多いが、和解記録は判決台帳に記載されない場合があるという点から説明した。さらに、判決台帳の記述の特徴をふまえれば、判決台帳でファトワーが言及されるのは、それを提出した当事者が勝利した場合のみであり、和解の場合はファトワーが提出されても記録されない可能性があること、さらに、今回検討した判決では、ファトワーは単独で判決の根拠とはならず、他の文書証拠や関連情報(ikhbār)を補強するものとして用いられていたと論じた。
質疑応答では、シャリーア法廷におけるムフティーの役割や両者の関係、ムフティーがファトワーを作成する際に実際何を参照していたのか(典拠として法学書のタイトルが記載されていても実際には注釈書を参照していた可能性がある)といった点について質問が寄せられた。加えて、ファトワー文書の伝存状況や法廷台帳におけるファトワーへの言及についてオスマン朝の状況との比較がなされた。
翌16日の研究打ち合わせ会議には科研費の分担者らが出席し、科研費による今後の共同研究計画について話し合いがなされた。
(2024年8月28日更新)