第9回「オスマン帝国史料の総合的研究」研究会(2011/4/16)

研究班「オスマン帝国史料の総合的研究」では、末期オスマン帝国の歴史家・法律家アフメト・ジェヴデト・パシャによる『覚書 (Tezakir)』の講読および翻訳作成を最終目的として、研究を進めています。

下記日程にて第9回研究会をいました。

第9回研究会
[日時] 2011年4月16日(土) 13:30~17:30
[会場]東洋文庫7階会議室
[テキスト]ジェヴデト・パシャ『覚書 (Tezakir)』第1巻、50~55頁 (『覚書』手稿本と刊本の照合・翻訳読み合せ)
[担当者]長谷部圭彦

[概要]
 2011年4月16日に東洋文庫において第9回目の『覚書(Tezakir)』研究会が行われた。今回の研究会には6名が参加し、転写本50頁から53頁について長谷部圭彦氏の訳稿を元に検討された。

 今回検討された部分では、まず51頁前半で人事に関する閣議の決定や総評議会の議論内容について述べられた。その内容は主に不動産登記と土地に対する課税、戦争によって離散したイスラーム教徒の村々の再編成についてであった。

 52頁の初めにかけてはイスタンブルに赴任したフランス大使の述べるオスマン政府内の人事とイギリスとの協調に関するフランスの立場、及びそれに対するオスマン帝国側の認識について述べられた。また同頁後半ではイギリス議会でオスマン帝国の借款が可決されたことや、総司令官オメル・パシャに対するイギリスのガーター勲章授与の様子などが述べられた。

 そのほかイスタンブルで発生しキリスト教徒の街区が被害を受けた火災とその後の義援金徴収について述べられ、それ以前の義援金徴収の様子を踏まえて当時のイスタンブルの住民の義援金出資への認識が明らかにされた。53頁後半以降の検討については次回に持ち越された。

 今回の研究会も今までと同様、前もって担当者が試訳を配布しメールのやりとりによってそれに対する意見を交換しておくという形で行われた。そのため、事前に交換された意見の確認やそれを踏まえて更なる議論を行うことよってより自然な日本語に直すことで、検討を効率的に進めることができた。また、「侍医頭(Hekim-başı)」や「民政長官(İhtisab nazırı)」などの役職名の訳語について議論が行われたほか、Dâr-ı Şûrâの訳語については確認すべき事項として保留された。

 転写の正確性についても、前回同様手稿本の電子画像と照らし合わせることが可能となったことで、数ヶ所の転写の誤りが指摘された。その多くは接尾辞などの誤記であったが、olunmamalıdırとなるべきところがolunmalıdırとなっていることが指摘されるなど、より正確を期することができた。

 今回の研究会は前回から約1ヶ月ぶりに行われ、次回の研究会も約1ヶ月後に予定されている。およそ1年のブランクを経て前回から再開された当研究会は、今後もコンスタントなペースで開催されると思われる。

文責 永山明子(東京外国語大学大学院博士前期課程)

« »