第1回オスマン文書セミナー(2008/12/21-12/22)

 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所(AA研)での共催で、中東イスラーム研究教育プロジェクトの一環として、第1回オスマン文書セミナーを開催しました。

中東イスラーム研究教育プロジェクト第1回オスマン文書セミナー
[主催] 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所
[共催] NIHUプログラム・イスラーム地域研究東洋文庫拠点
[期間] 2008年12月21日(日)~22日(月)
[会場] 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所3階マルティメディア会議室(306号室)
(〒183-8534 東京都府中市朝日町3-11-1)
[講師] 高松洋一(AA研)
        清水保尚(東京外国語大学オープンアカデミー講師)

[概要]
第1回オスマン文書セミナーは、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所中東イスラーム研究教育プロジェクトの一環として、NIHUプログラム・イスラーム地域研究東洋文庫拠点との共催で2008年12月21・22日に行われた。関東一帯を中心に各地から30名以上が両日参加し活発な議論、交流が行われた。
 
 初日は、髙松洋一氏(東京外国語大学)により、「オスマン文書総論」として、文書学、アーカイブ学的観点に沿って、図画資料を用いながらオスマン文書の解説が行われた。まず、文書及び帳簿の定義、オスマン文書の特徴が述べられ、文書に用いられる多様な言語と書体、オスマン文書を対象とした古文書学、オスマン文書を所蔵するアーカイブズについて解説が行われた。その中で、個別の文書様式を記述することに主眼が置かれ、文書の機能論的研究及び伝来論的研究が軽視されてきたことや文書の収集・整理における問題点等が指摘された。
 
続いて「文書行政と官僚組織」では、文書行政を担った大宰相府、財務長官府の書記と部局の構成と職務を説明した後、勅令を例に文書を用いた行政の情報処理のプロセスとアーカイブズの管理方法が解説された。講義終了後には、「上奏と宸筆」と題して、セミナー参加者により、君主への上奏と上奏に対する君主の回答を記した文書の講読が行われた。

 二日目は、前日から続けて上奏と宸筆の講読が行われ、講読した文書をもとに、上奏と宸筆の機能、情報処理プロセス、さらには宸筆の持つ意義や上奏と宸筆の通時的な変遷に至るまで幅広い内容について解説が行われた。

 次に、清水保尚氏(東京外国語大学)により、「財務行政に関する帳簿について」という題で、国庫収入の出納を扱う財務帳簿の解説が行われた。その中で、帳簿の機能に応じた①原簿、②業務遂行上作成された帳簿、③中央への報告用として簡約化された帳簿という三分類が示され、特に原簿の持つ重要性が強調された。また、勅令、指令を控えた帳簿を例に徴税を巡る中央と現場とのやり取りの一端が明らかに出来ることが紹介され、財務帳簿に関して、業務上のいかなる段階で作成されたのかを認識する必要性や、帳簿と文書の連関性の認識が研究に求められていることが指摘された。

 続けて「徴税請負簿」の講読が行われ、非常に難解な徴税請負簿の読み方から、その機能、さらにはオスマン朝における徴税機構、徴税プロセスに至るまで実際の文書を実例に詳細な解説が清水氏により成された。

 総合討論の場では、講読した個々の文書の内容から各地における文書研究の現状とその問題点、さらにはオスマン朝君主の呼称といったオスマン朝史または文書研究の枠を越える幅広い質問が寄せられ、活発な議論が展開された。今後、本セミナーがさらなる発展を遂げることを期待したい。

[プログラム]
12月21日(日)
14:00-14:15 趣旨説明 講師紹介
14:20-16:00 オスマン文書総論
16:20-18:00 文書行政と官僚組織

12月22日(月)
10:30-12:10 上奏と宸筆
13:00-14:40 財務行政に関する帳簿について
15:00-16:40 徴税請負簿
17:00-18:00 総合討論

文責 岩本佳子(京都大学大学院文学研究科西南アジア史学専修博士後期課程所属)

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