第4回「オスマン帝国史料の総合的研究」研究会(2008/12/14)

研究班「オスマン帝国史料の総合的研究」では、末期オスマン帝国の歴史家・法律家アフメト・ジェヴデト・パシャによる『覚書 (Tezakir)』の講読および翻訳作成を最終目的として、研究を進めています。

第4回研究会
[日時]  2008年12月14日(日) 13:00~17:30
[会場]東洋文庫イスラーム地域研究資料室
※東洋文庫本館とは別建物です。ご注意下さい。
道順: 駒込駅から本郷通りを六義園方向へと直進し、ampmを過ぎてすぐの辺りにあります。1階に日本通販の店舗が入っています。入口はビルの右手裏側にあります。

[テキスト]ジェヴデト・パシャ『覚書 (Tezakir)』第1巻、14~27頁
[翻訳担当者]長谷部圭彦・黛秋津

2008年12月14日日曜日、「覚書」第4回研究会が東洋文庫東洋文庫イスラーム地域研究資料室にて開催された。前回までは東洋文庫の本館で開かれていたが、東洋文庫の建て替えに伴い、今回からイスラーム地域研究資料室にて行われることとなった。辞書・工具類については完備されているため、会の進行に不都合はなかった。今回も、一週間前より担当者が試訳をメールで参加者に送り、参加者がメールによって積極的に疑問点を指摘しあうことが行われた。

訳稿の検討の前に、前回までの部分で議論となっていたいくつかのタームの訳語について検討する時間が持たれた。前回より引き続き問題となったのが、オスマン海軍の最高責任者の職名である「カプタヌ・デルヤー」の訳である。前回までの議論については、第三回研究会レポート(佐々木紳)を参照されたい。

今回、同職の歴史的展開、および他国の同種の職業の呼称について、秋葉淳氏と澤井一彰氏が報告を用意した。そこでは、「カプタヌ・デルヤー」という呼称は15世紀より続くオスマン朝の由緒ある職名であり、19世紀に同職に就いた者たちも、その呼び方に強い愛着を持っていたという事例が指摘された。それゆえに、訳語も「海軍長官」という近代的な呼称を採用するよりは、「大提督」という、「カプタン」という語のニュアンスを生かした訳語が相応しいということで同意を得た。古くから続く役職の場合は、同時代人もその呼称の「古さ」を意識していたのである。もちろん、これは全ての官職の訳語に適用しうるわけではないが、今後さまざまなタームの訳語を確定していく際の一つの指標となろう。
こうした議論においては、秋葉・澤井両氏報告が非常に有用であり、事前に下調べをすることの重要性が改めて認識された。

タームの検討に引き続き、『覚書』訳稿の検討が行われた。今回、訳稿を担当したのは、長谷部圭彦氏(前回よりの続き)そして黛秋津氏である。メールによる事前のやり取りが功を奏してか、全体として非常にスムーズに訳の検討を進める事ができた。今回は訳語の検討に非常に時間をとられたが、のちの作業を考えると、時間はかかったものの有意義な結果が得られたのではないか。次回以降は、より長い分量の検討が期待される。

文責 小笠原弘幸(日本学術振興会特別研究員/東洋文庫)

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