東洋文庫拠点研究会(2007/3/15)

「ワクフ研究の歴史をたどる:規範から拡散へ」
From the Normative to the Discursive – Historiography of World Waqf Studies –

[発表] ランディ・ドゥギエム氏
[日時] 2007年3月15日(木)15:00-17:00
[場所] 東洋文庫3階会議室

[概要]
前回と引き続き英語を使用言語とする研究会ではあったものの、大学院生を中心に20余名の出席者を集めた。
ドゥギエム氏はまず①ワクフ寄進者②ワクフ財産③(寄進者が任命した)ワクフによる利益の受益者の三者の相互関係を図式化し、ムスリム社会におけるワクフの多機能性を指摘した。

次いで研究史の見地から、19世紀~20世紀前半のワクフ研究の手法は主として年代記や地誌などの叙述史料を用いていたため「規範的な」枠組みに沿ったものであったが、20世紀後半以降のオスマン朝期の文書史料の使用状況の改善(ひいては使用史料の「拡大」)に伴い、ワクフ運営に関する実際のプロセスやワクフの多様な社会的機能の解明が可能になったことを挙げ、ワクフとその研究が、社会全体を映し出す鏡としての役割を果たすという展望を述べた。

本研究会の出席者は、オスマン朝期以外を専攻する大学院生からオスマン朝期を専門とする若手研究者までと、レベルのばらつきがやや懸念されたものの、ドゥギエム氏は図式を用いた平明な解説にオスマン朝期の文書史料を随所に織り交ぜ、概説的要素と専門的要素をバランスよく組み合わせることで、幅広い層の関心に応えた。

[発表者紹介]
20070318
ランディ・ドゥギエム氏 Dr. Randi DEGUILHEM(CNRS教授・IREMAM)フランス国立科学研究所(CNRS)教授・フランス国立アラブ・イスラーム世界研究所所属。博士(史学)。
専門は近現代の中東(シリアを中心とする)社会・文化史。
文書史料を用いたオスマン朝期ワクフ研究及び環地中海の社会史研究において業績多数。
多くの研究叢書の編纂に携わり、フランス中東学会の事務局長としてその活動の中枢を担う氏は、研究・運営両面でフランスの中東研究全体をリードする存在である。

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