「シャリーアと近代」平成23年度第2回(通算第23回)研究会

イスラーム地域研究東洋文庫拠点研究班「シャリーアと近代:オスマン民法典研究会」 は、科研費(基盤B)「イスラーム法の近代的変容に関する基礎研究:オスマン民法典の総合的研究」と共催で、オスマン民法典(メジェッレ)のアラビア語訳の講読および翻訳作成を最終目的として、 研究を進めています。

下記日程にて今年度第2回(通算第23回)目の研究会および会合を行いました。

[日時] 2011年7月3日(日) 13:00~17:30
[会場] 東洋文庫7階会議室(東京都文京区本駒込2-28-21)
[概要]
今回は、大河原氏の試訳に基づき、売買の第5章第2節 حبس المبيع(売買目的物の留置)、第3節 مكان التسليم(引渡し場所)、第4節 مؤنة التسليم ولوازم إتمامه(引渡し費用と履行要件)について検討を行った。

いくつかの条文に関連して、イスラーム法と日本民法における内容面での違いが明らかになった。まず第280条の、質物を供し保証人を立てても留置権が消滅しないという定めである。次に第282条で、イスラーム法には債権譲渡という概念が存在せず、حوالة を「債務引受け」と訳すべきであるとの指摘がなされた。最後の第292条については、法廷で契約文書を作成することを念頭においた規定であるという解説がなされた。オスマン民法典の翻訳はイスラーム民事訴訟法の研究のためにも有意義であることが確認された。

その他、訳語に関して以下のような提案・合意がなされた。بيع بالثمن الحال は「現実売買」、وقت حلول الأجل は「弁済期」とし、سقط とその派生形には「消滅」の語を当てる。كذا については、「某」、「これこれ」などの直訳を避け、意訳によって法文らしい体裁を工夫する。

契約内容の説明のために頻繁に用いられるعلى أن を「~という条件で」と訳すことに関して、日本民法にも同様の使用例がある(例えば民法528条)ので問題ないという指摘もあったが、やはり契約の効力発生要件としての条件との混同を避ける方が無難であるとの見解が支配的であった。結局、「約定」という訳が採用された。

契約当事者が契約をفسخ するかأمضى するか選択し得る場合に関して、もし日本民法の用語法を意識するなら、「解除するか追認するか」と訳すことには問題があるとの意見が出た。なぜなら、解除は契約が有効な場合、追認は契約に瑕疵がある場合に限られるからである。代案として、「解除するか維持するか」という訳が示された。この点については、次回以降も引き続き議論されよう。

文責:浜本一典(同志社大学神学科博士後期課程)

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