Q.タイトルの言語が判断できない

ペルシア語などの資料がアラビア語の標題を持つことは決して珍しくない。特に古典作品ではその傾向が強く、また、アラビア語作品の校訂、注釈、翻訳などを他の言語で出版するとき、アラビア語の標題をそのまま用いることも普通である。

タイトルがアラビア語風のペルシア語資料

アラビア語タイトルを持つペルシア語資料の例:

このような場合、タイトルの言語をどれにすべきか、また、どの言語の翻字規則に従うべきかの判断が必要になる。

参考:NACSIS-CAT/ILL Q&A DB <A000943500> 2005/10/26 [図書] 「 ヨミのフィールドおよびTTLL,TXTLの使用法について 」

朝鮮人著者による漢文(朝鮮の訓点あり)とハングルで書かれた『燕行録全集』のタイトル言語とヨミの音写方式についての質問に対する回答。

  • 日本人や朝鮮人が記した「漢文」は母国語の一形態とみなすとの判断。ただし、「現状では、マニュアルで詳細に規定されているものではないので、作成者の裁量に委ねられる範囲にあたる」。
  • TRフィールドのヨミの記録は、そのタイトルの言語(TTLLに記録された言語コード)により判断される。

上記の2書誌の場合のように、本文が元々ペルシア語で書かれたものであり、責任表示の役割を示す語句がペルシア語であるものは、タイトルもペルシア語とみなし、ペルシア語の翻字規則を適用するのが妥当である。

また、この判断に従うと、パフラヴィー語(本来パフラヴィー文字で表記)からの翻訳などで、パフラヴィー語の標題をアラビア文字のペルシア語に転写したタイトルも、ペルシア語とみなせる。

例:مادیان هزار دادستان (参考:http://ci.nii.ac.jp/ncid/BB1480470X

本文がアラビア語のイランで出版された資料

アラビア語本文の校訂本がイランで出版され、ペルシア語の序文等を付されているものもある。このような場合、出版者が標題をアラビア語として表記しているのか、ペルシア語として表記しているのかを判断する基準は、責任表示の言語(役割を示す語句や、人名表記)や版表示、出版事項などの表記などから判断する。

1.ペルシア語責任表示であることを示す特徴的な語句には以下のものがある。

原綴 翻字 和訳 備考   
از az ~による、~から                   
به کوشش, بکوشش bih kūshish-i, bi-kūshish-i ~の尽力による 主として編者に用いる
نگاشته nigāshtah-i 監修された
نوشته nivishtah-i 著、書かれた
شده shudah ~された
زیر نظر ~の監修の下
ترجمه، ترجمۀ tarjamah(-i), tarjamah-ʾi 翻訳(された) アラビア語彙だがةがهになる
پیشگفتار pishguftār 前書き
مقدمه، مقدمۀ muqaddimah(-i), muqaddima-ʾi 序文 アラビア語彙だがةがهになる
با ~とともに、~を付して
در dar ~における、~の中に
به bih ~で、~に、~による 前置詞。アラビア語bi-hiとの混同に注意
پژوهش pazhūhish 研究
برگزیده bar guzīdah(-i) 選ばれた  選集など
نویسنده nivīsandah 著者
نگارنده nigārandah 監修者
گردآورنده girdāvarandah 編纂者
کننده kunandah ~する人

2.版表示、出版事項

アラビア語の本として(アラビア語話者向けに)出版されている場合は、版表示や出版事項もアラビア語で表記されていることが多い。

意味 ペルシア語 アラビア語 備考              
版・刷  چاپ، ویراسته  الطبعة 版と刷の区別がないことが多いが、ویراستهは改訂を伴う版であることが多い
改訂された با تجدید نظر، با اصلاحات منقحة
増補された با افزوده‌ها مزيدة
~年 سال سنة
テヘラン(地名) تهران طهران