シリア、レバノンにおける資料収集・調査

[期間]

2009年7月31日(金)~8月15日(土)
[国名]
シリア・アラブ共和国 レバノン共和国
[出張者]
柳谷あゆみ(人間文化研究機構 / 東洋文庫)
[概要]
本出張ではシリアの書店及び国際ブックフェアにて資料収集を行うとともに、シリア・レバノンの学術機関にて資料調査・研究連絡を行った。

シリア国内では、フランス近東研究所(IFPO)にてアラビア語史料の調査及び読解を進める一方、書店にてイラクの歴史・考古学雑誌Sumerを始め、東洋文庫未所蔵分の学術雑誌の収集を行った。今回の出張では、前述のSumer全巻を収集し、初年度から収集を続けている歴史雑誌Mawridや文化雑誌Karmilの新刊も補充した。

Karmilは、1981年冬にアラブ、パレスティナを代表する詩人であるマフムード・ダルウィーシュによって創刊され、以来28年に渡って刊行を続けてきたが、編集人マフムード・ダルウィーシュの死去(2008年)に伴い、今回収集の90号を以って終刊した。終刊号である90号は、マフムード・ダルウィーシュを追悼し、その仕事とダルウィーシュとともにあったKarmilを総括する内容となっている(コンテンツを東洋文庫拠点サイト「収集資料」にて公開しているので参照いただきたい)。

09damas2 ダマスカス歴史文書館では、ガッサーン・オベイド館長にお会いした。オベイド館長は、今年2月の来日では東洋文庫拠点研究会にてオスマン朝下ダマスカスの農業投資システムについて発表し、また同館資料の利用環境と資料補修技術の紹介を行われたが、今回訪問で改めて資料の保存状況や補修作業を実見することが出来た。

また8月7日から8月16日まで、第25回ダマスカス国際ブックフェア(主催:文化省アサド図書館・後援:アッタール副大統領)が開催された。

今年度からは会場が空港道路沿いの新国際展示場に移ったため、市内二ヶ所(バラーミケ、バーブ・トゥーマ)から会場までの無料バスが運行されていた。今回ブックフェアには283の書店及び機関が参加、出展内容は新刊が中心だったが、辞書などのツール類や古典では以前からの版も出展されており、個人的にも収穫ある内容だった。市内から1時間弱という会場立地にも関わらず、海外のTV取材もあり、盛況だった。09damas

12日からベイルートに移動、東洋学研究所(Orient Institut)を訪問し、また同研究所のシュテファン・クノスト研究員(東洋文庫拠点研究分担者)と連絡事項の確認を行った。
偶々、訪問日に行事があったため、シュテファン・レーダー所長にもお会いできた。

今回は早くから準備が出来たため、比較的余裕を持って予定をこなすことが出来たが、ここ数年のダマスカスの変化を特に実感した出張となった。また、物価もこの数年上昇を続けており、郵送料(日本向け葉書が35ポンド)、出国税(空港からの出国の場合1500ポンド)など全般に価格が上がっている。

ベイルート、アンマン行きの長距離タクシー乗り場は、バラーミケからメッゼ方面のスーマリーエに移り、またシリア国内文化行事の会場として新国際展示場(2003年完成)の利用も増え、街の機能が市内から郊外に分散されつつあるのがわかった。

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