東洋文庫合同研究会(中央アジア古文書セミナー)(2007/3/17-3/18)

[日時] 2007 年3月17日(土)~ 3月18日(日)
[場所] 京都外国語大学 9号館(国際交流会館)4階会議室

[プログラム]
3/17(土)
<報告>
科研費・トヨタ財団助成金によるヒヴァの法廷文書研究について
堀川徹(京都外国語大学・東洋文庫)
<古文書講読>
「ロシア支配期中央アジアの法廷台帳」
矢島陽一(京都外国語大学)

3/18(日)
<古文書講読>
「中央アジアのファトワー文書」 磯貝健一(京都外国語大学・東洋文庫)
<講演>
「革新的流行:オスマン朝の最終世紀における公立学校」
ランディ・ドゥギエム(CNRS/IREMAM)
A Revolutionary Mode: The Ottoman Public Civil Schools in the Last Ottoman Century
– Examples from Damascus and Tripoli, Libya –

[概要]
本研究会は、中央アジア古文書セミナーとの合同で二日間にわたって行われ、のべ50名の出席者を集めた。
中央アジア古文書セミナーは科学研究費補助金による「中央アジアにおけるムスリム・コミュニティーの成立と変容に関する歴史学的研究」の一環として毎年開催されている。

堀川氏はトヨタ財団助成プロジェクト及び上記研究の概要と進行・成果を紹介し、会場では『中央アジアにおけるムスリム・コミュニティーの成立と変容に関する歴史学的研究』『新疆およびフェルガナのマザール文書(影印)』が配布された。
古文書講読一日目担当の矢島氏は、新規に収集した法廷台帳をまず紹介し、その形式の解説と新収史料を用いた研究の可能性を提示した。

二日目の古文書講読はワークショップ形式で行われ、収集史料を用い担当・磯貝氏の解説・指導のもと出席者も一緒に読解を進めていった。
出席者には事前に資料が配布されており、ほぼ全員が予習済みの状況で当たるため、解説・議論ともハイレベルで充実したセミナーとなった。

ドゥギエム氏は講演においてオスマン朝末期(19世紀後半~20世紀初頭)の中東アフリカにおける世俗学校(maktab madani)設立を、タンズィマートに端を発する近代化の潮流を顕著に表す道標と位置づけ、ダマスカスとリビアのトリポリの例から、豊富な画像資料を用いその概容を紹介し考察を述べた。

中央アジア古文書セミナーは今回で五回目の開催となるが、休憩時間や終了後にも参加者同士が情報交換を盛んに行っており、参加者のレベル・意識の高さに継続の強みを感じさせた。
講演前にセミナーに出席したドゥギエム氏も、ペルシア語とアラビア語が混在する法廷文書を読み解く本セミナーの活況には強い関心を示し、積極的に質疑に加わったほか、終了後もワクフ研究における研究協力の可能性について触れるなど、今後の研究交流において意義深いと思われる場面が散見される会となった。

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