アラビア文字資料整理作業者ミーティング(2010/3/5)

[日時]2010年3月5日(金) 13:00-17:00
[場所]財団法人東洋文庫研究部イスラーム地域研究資料室
[参加者]
安食優子(東京大学東洋文化研究所)/ 内村奈緒美(東京大学大学院人文社会系研究科・文学部図書室)/ 小原立(九州大学大学院人文科学府イスラム文明史学専修 修士課程)/ 倉澤理(東京大学大学院人文社会系研究科博士後期課程)/ 後藤敦子(東京外国語大学附属図書館)/ 高橋理枝(アジア経済研究所図書館)/ 武内美紀(九州大学大学院人文科学府イスラム文明史学専修修士課程)/ 林瞬介(国立国会図書館関西館アジア情報課)/ 松井香織(大阪大学附属図書館)/ 三浦徹(財団法人東洋文庫・お茶の水女子大学)/ 村上明香(東京外国語大学附属図書館)/ 柳谷あゆみ(財団法人東洋文庫・人間文化研究機構)/ 大和加寿子(東京外国語大学附属図書館)
[講師]
蟹瀬智弘(大学図書館支援機構)

[プログラム]
1.挨拶・自己紹介  13:00-13:10
2.アラビア文字資料の目録作成 13:10-14:20
3.アラビア文字言語の翻字 14:20-15:00
4.NACSIS-CATへの登録 15:00-16:00
5.総合討議

[概要]
機関によって違いはあるが、アラビア文字言語による資料は担当司書と当該言語に精通した研究者や大学院生が協力して整理にあたることが多く、担当する作業内容もそれぞれ異なっている。この状況を踏まえ、アラビア文字言語資料の書誌整理の現場で実際に整理業務に当たっている担当者が集まり、書誌整理及びNACSIS-CATへの登録方法を確認し、問題点を含めた情報を共有しておくことを目的として本ミーティングは開催された。

ミーティングでは、(1)アラビア文字資料の目録作成(2)アラビア文字言語の翻字(3)NACSIS-CATへの登録の三つに関して基本事項と留意すべき点についての報告が行われた。(1)(2)は、柳谷あゆみ(東洋文庫研究部イスラーム地域研究資料室)が報告を担当し、(3)は講師として招聘した蟹瀬智弘氏(大学図書館支援機構)が報告を行った。

>>(1)報告「アラビア文字資料の目録作成」
>>(2)報告「アラビア文字言語の翻字」
>>(3)報告「NACSIS-CATへの登録」

(1)アラビア文字資料の目録作成

目録作成については、参加者全員がすでに作成業務に従事している状況を考慮し、基礎の確認に重点を置いて報告を行った。『英米目録規則』第二版及びNACSIS-CATへの登録マニュアル『目録情報の基準』に基づき、書誌整理初心者が読みながら目録登録ができることを意図した簡便なマニュアルを作成し、マニュアルの内容を確認しながら、『英文目録規則』第二版の目録規則と、NACSIS-CATへの登録方法との相違についても具体的に言及した。また、同時にパワーポイントで書誌整理の過程を見ながら、記載の確認を行った。
<参考> アラビア文字資料書誌整理マニュアル(草案)
特に、アラビア文字言語の資料に多い合集の書誌の取り方は、「総合タイトルのある合集」「総合タイトルのない合集」の書誌の取り方をそれぞれ確認した。なお、総合タイトルのない合集で、それぞれの著作の著者が異なる場合は、区切り記号のとり方がNACSIS-CATと英米目録規則とでは異なるので注意を要する旨、蟹瀬氏より補足があった。

【報告事項・質疑で挙がった主な内容】

全般
・アラビア語では接続詞のو と次の文字の間にスペースを入れない。

タイトル及び責任表示
・「タイトルと責任表示」(TR)にあるアラビア語の数字は、そのまま転記してよい。
※なお、NACSIS-CATでは、登録段階で包括されるので、これは自動的にアラビア数字に変換される。国会図書館OPACではこの包括は行われない。
・エジプトの出版物で多い、ヤーの点が省略されている場合:タイトルの場合でも「言語の正書法に則って書き換える」という原則を考えれば、ヤーに書き換えた方が良いと思われる。

版表示
・版表示で「初版」は記載すべきか?→各館での選択事項と思われる(ローカル判断)。
・版表示の数字→アラビア数字を使用する。
・アラビア語で「版」を書く場合、الطبعة と書くべきか、ط と略でよいのか、数字だけでも良いのか?→特に規定はないが、入れる場合は書いてある通りに入れたほうが良いのでは?

出版情報(出版地・出版者・出版年)
・出版情報における[S.l.]等略号のアラビア語訳・ペルシア語訳は使えるか?:non-roman scriptの場合は翻訳すべきか。規定上は使っても問題ない(そのまま[S.l.]等を使っても良い)。
・出版年としてヒジュラ暦のみ表記されている場合の書き方は?:換算した西暦は[]でくくって併記する(i.e.は記述する必要なし)。

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(2)アラビア文字言語の翻字

今回の報告では、アラビア語、ペルシア語、オスマン・トルコ語、マレー語(ジャウィ)を採り上げ、NACSIS-CATのコーディングマニュアルで採用されているALA-LC Romanization tables(米国議会図書館採用翻字表)をそれぞれ確認した。
この翻字規則は通常研究者や大学院生が用いる翻字規則(平凡社『新イスラム事典』の翻字規則など)とは異なるので、その点を強調し、実際に相違点の説明を行った。

【報告事項・質疑で挙がった主な内容】

アラビア語
1.定冠詞alはALA-LCで発音しない場合もalと翻字する。
2.前置詞fīは単音化する場合もfīと長母音のまま記載する。
3.接続詞のwaはアラビア語の正書法では次の語に続けて(次の語との間にスペースを入れない)書くので、翻字ではwa-とハイフンを入れて記載する。
4.ター・マルブータはhとtの二通りの翻字がある。tと翻字するのはイダーファがかかる場合のみ。
5.同綴異字との混同を避けるために、プライムを使用する。プライムのコードは02B9を使用する。
6.アリフ・マクスーラはāではなく、áと翻字する。

ペルシア語
1.母音はa, i, uとその長母音のみを使用する(=e,oを用いるのは誤り)
2.(翻字の問題ではないが)ی ک の二文字は同形のアラビア文字と違うコードがあてられているので、ペルシア語をアラビア語のフォントでは打たない方が良い。
3.و の翻字はv
4.エザーフェの翻字は三種類ある。
(1)ムザーフにエザーフェを示す文字がない場合はi (2) ムザーフにハムザが入る場合はʾi (3)ムザーフに ی が入る場合はyと翻字する。

オスマントルコ語
1.翻字ではなく翻語が優先される。翻語して、表記の揺れを整えるというのが、オスマントルコ語の翻字となる。
2.翻語の際の参考資料が複数あるが、優先順位が確定していない。
3.Özegeの書誌目録(Eski harflerle basilmiş Türkçe eserler kataloğu)使用について:翻字・書誌の取り方が恣意的。版によっても表記が異なるので、(使用しないほうが望ましいが)仮に使用するならOzegeの第何版を用いたと明記する必要がある。

マレー語(ジャウィ)
1.翻字ルールはインドネシア式を採用。
2.同じ綴りで書かれている語でも、アラビア語の引用として書かれている場合と、借用語(=マレー語)で書かれている場合とで翻字方法が異なる。

その他
Zero Width Non-joiner(unicode:200C)の入力:ウルドゥー語キーボードでShift+xで入力可。

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(3)NACSIS-CATへの登録

NACSIS-CATへの登録については、まず書誌作成の際に参照しなければならない情報(『英米目録規則』第二版、『目録情報の基準』、オンラインニューズレター抜刷集、Q&A)が分散している現況が指摘され、それを踏まえて通常気づきにくい落とし穴が取り上げられた。書誌作成単位、各フィールドの注意点、データの修正及びレコード削除の方法と見落としがちな留意点が具体的に説明され、それぞれの報告の後に活発な質疑応答が交わされた。

【報告事項及び質疑で挙がった主な内容】

書誌作成単位
「固有のタイトルで無いもの」(巻次、部編名など)は基本的には除外。詳細は『目録情報の基準』4.2.3「図書書誌レコードの作成単位」を参照。

各フィールドの注意点
1.コードブロック
TXTL(Text Language Code):言語が複数あるときに優先するものは
書誌・データ表→凡例・解説等の言語
文法書、多言語辞典→主たる利用対象者の言語(和英辞典であれば日本語)
ORGL(Original Language Code):直接の翻訳対象となった言語を取る(重訳に注意)。
VOL:情報源は標題紙。
ISBN:最新のものを記入し、古いものはXISBNに。
PUB:出版年の優先順位は(1)出版年(2)著作権表示年(3)印刷年
2.リンクブロック
AL(Author link):伝記・記念論文集の対象者は、当該資料中にその人物の著作があればALに記載する。
PTBL(Parent bibliography link):リンクは必須。最初のシリーズ番号は区切り記号なし。
3.データの修正及びレコード削除
(1)書誌データの削除:参加館は削除できず「削除予定レコード」化したものを、NIIが削除する。
※所蔵がある状態では「削除予定レコード」化できない。
削除予定レコード化するには以下のコードに以下の通り記述する。
TTLL: und
TXTL: und
TR: 削除予定レコード
PUB:削除
(2)所蔵データの修正・削除:各館固有データなので、各館で修正・削除できる。

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参加者からもテクニカルな問題点及びその解決法が多く指摘・紹介され、情報を共有していく上でも実り多いミーティングとなった。
ミーティングの後に、今後の情報共有のためのメーリングリスト「アラビア文字資料整理メーリングリスト」が開設された。アラビア文字資料整理に関わる人であれば誰でも参加できるので、関心をお持ちの方は当資料室までご連絡をいただきたい。

(東洋文庫/人間文化研究機構 柳谷あゆみ)

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