アラビア文字図書DB連絡会準備会議(2006年度)

[日時] 2007年3月12日(月)14:00-17:00
[場所] (財)東洋文庫三階会議室
[参加機関]
アジア経済研究所図書館 / 大阪外国語大学附属図書館 /九州大学文系合同図書室 / 京都大学アジア・アフリカ研究科図書室 / 慶應義塾大学メディアセンター / 国立国会図書館関西館アジア情報課 / 国立情報学研究所 / 東京外国語大学附属図書館 / 東京大学文学部図書館 / 同志社大学総合情報センター / 東北大学附属図書館 / 早稲田大学中央図書館 / 東洋文庫

三浦徹イスラーム地域研究東洋文庫拠点代表者より趣旨説明の後、最初に国立情報学研究所よりNACSIS-CATにおけるアラビア文字資料登録状況について報告が行われた。

[報告] 「NACSIS-CAT におけるアラビア文字資料登録状況」 国立情報学研究所
[概要] NACSIS-CAT(オンライン共同分担目録方式による総合目録DB形成システム)におけるアラビア文字対応については、2000年からワーキンググループでの協議を重ねたうえでコーディング・マニュアル作成などの入力環境整備を行い、2003年7月から登録を開始している(多言語対応自体は2000年開始)。

また、2004年よりコアとなるデータの蓄積を目的とした遡及入力事業を開始した。遡及入力事業では、第一期(2004-06年)は多言語・人文社会科学系図書の書誌を中心に採択しており、アラビア文字図書については延べ17機関24件が採択されている。これらの事業および登録作業の進展に伴い、アラビア文字図書の書誌登録数は2007年3月現在で約7万件に達した。NACSIS-CATからの書誌データ流用数と新規登録数の比率は、2004年度には1:3であったのが、2005年度には1:1.4、2006年度にはほぼ1:1と両者の数が近づき、書誌データ蓄積の効果が現われつつある。

[各機関報告]
アラビア文字図書の収書数報告の後、入力・整理状況及び問題点の報告を行った。整理状況及び問題点について、各機関報告を元に概容を以下に記述する。

なお、報告内容に一定の共通性を持たせるため、国立情報学研究所を除く各機関には事前に報告フォームが配布され、報告は基本的にはこのフォームに沿って進行した。

1. 選書

選書については「図書館サイドでは積極的な選書を行っていない」という機関がほとんどで研究者・教員主導の状況がうかがえた。

2. アラビア文字図書利用状況(ILLなど)

総合図書館においては、年間20件未満の機関が大半を占める。比較的利用数が多い専門館では、全体利用数のおよそ一割を占めるという回答もあった。

3. 所蔵資料情報の利用者への提供状況

全ての参加機関においてOPACで所蔵資料情報公開を行っており、原綴(アラビア文字)での検索もほぼ全機関で可能であった(一部可を含む)。翻字のみ検索可の機関も、次期システムでの導入を検討中との報告があった。

4. 整理状況

[書誌入力作業 :自館/外注]
今回の参加機関では、書誌入力について、外注(業者委託)と回答した機関(OCLCからの流用及びNIIの遡及入力事業を含む)は4機関(国立国会図書館アジア情報課、東北大学、同志社大学、早稲田大学)で、残りの機関は自館入力との報告だった。
※全国的には外注の機関の方が多数を占めると思われる。

[入力言語 :翻字/原綴/併用]
自館入力と回答した機関で、NACSIS-CATに登録参加している場合は、CAT規定により、翻字・原綴の両方で入力を行っている(東洋文庫のみ原綴入力)。また、NACSIS-CATへの登録不参加の機関(慶大、早大、国立国会図書館。アラビア文字図書の場合のみ登録不参加を含む)では、翻字のみが1機関(慶大)、翻字・原綴の併用が2機関(早大・国立国会図書館)であった。

5. 整理上の問題点

[NACSIS-CAT参加上の問題点]
(1) マニュアル・ルールの不徹底

  • NACSIS-CAT参加館だが、入力を研究室に依頼しており、研究室での翻字法とNACSIS-CATでの翻字法が異なるなどの問題が出ている。

担当職員がアラビア文字や資料に関する知識が無いため、改善が難しい(九大文系合同図書室)。

  • 翻字の文字コードについて:画面上では同じ文字に見えるが、コード番号が複数ある文字がある。

→違うコード番号で入力されると、同じ文字に見えるにもかかわらず検索でヒットしない。(大阪外国語大学)

  • アラビア語の接続詞の و は次の単語に続けて入れるルール(アラビア語小委員会で決まったという話を聞いている)が必ずしも共有・遵守されていない(京大AA研)。

(2) NIIでの翻字自動変換(翻字からアラビア文字への自動変換)において生じた問題

(1) 区切り記号の ;(セミコロン)が ؛ (アラビックセミコロン)に自動的変換される。
→アラビックコロンは区切り記号として認識されないため、ローカル用納品データではこれが原因で問題が発生している。
また、このデータを参考にしたため、新規書誌作成の際に区切り記号としてアラビックセミコロンを使っている場合がある。現在は手動で一つ一つ修正している。(京大AA研)※なお、,(カンマ)も自動変換時に، (アラビックカンマ)に変換されてしまったが、アラビア語キーボード配列でアラビックカンマはshift+kだがshift+,でカンマが出るので区切り記号でアラビックカンマを使っている例は少ない。(京大AA研)

(2) 総合タイトルの無い合集の問題
自動変換において、タイトル及び責任表示のスラッシュ以降が自動的に切り落とされたため、総合タイトルの無い合集では、一冊目のスラッシュ以降全てが切り落とされてしまい(2冊目のデータが反映されない)、データに欠損が生じている。
自動変換の際には翻字データをTRVR(=タイトル及び責任表示のその他のヨミ)に移動しているが、読みには責任表示の翻字が必要ないため、一番目の△/△以下の翻字データをすべて消したことが原因と思われる。(京大AA研)

(3) NACSIS-CAT登録ソフトの問題
CATPフォーマットデータをローカルにアップデートないしローカルからダウンロードする際に、データの作業領域上限バイト数を超え、システムに誤作動が生じることが多い。多言語対応ソフトでは、多言語使用による作業領域増加を見越した改良を願いたい(同志社大学)
※なお、上位機種では対応済との意見もあった。
[機能上の問題・入力上の不便]

  • Unicodeによる対応の問題(=フォントの不足)
  • アラビア語の翻字には対応しているが、他のアラビア文字言語(ペルシア語など)の翻字では入力できない文字がある(東洋文庫イスラーム地域研究資料室・東大文学部)
  • 右から左に流れる文字(=アラビア文字)と左から右に流れる文字(数字やローマ字など)が一行に混在するとき、単語の並び順に逆転現象が起こる(東北大・同志社大・東大文学部)。
  • スクリーンキーボードの不足(ウイグル文字など):直接入力が出来ない(東大文学部)

※参考
東京大学文学部図書館より、独自にHTMLで「業務用特殊文字パレット」(キーボード入力の困難な文字のパレット)を作成し、対応している旨が報告された。(2006年より導入)
対象言語:ギリシア、キリル、キリル翻字、アラビア文字翻字、インド系文字翻字、タイ文字翻字、ヨーロッパ言語全般

[典拠・参照データの不在]

  • NACSIS-CATに参照データがないことが多く、書誌確認が困難(国会図書館アジア情報課)
  • OCLCからの流用ではたまに対処しきれない書誌がある(早大)

[翻字の扱い]
翻字の特殊記号によるタイプミス、泣き別れが多い。名前のバリエーションが少なく似通った人名が多い上に、父祖の名前から姓がとられたりした場合には姓名の見分けがつきにくい。
スペース、カンマ、ハイフンが記号というよりは名前の要素なので、コンピュータのインデクシングにおいて混同が起こり、索引検索が困難(慶大)。

6. 現在必要を感じている事項・情報

アラビア文字図書の書誌情報の登録に関して、より具体的な細則の決定と情報ツールの共有を要望しているという点で意見が一致した。またアラビア語以外のアラビア文字言語(ペルシア語など)に対するルール・セッティングの必要性も指摘された。

NIIに対しても、現存のマニュアルより細部にわたっての目録入力規定の制定や、外注の仕様書フォームの作成を望む声があり、NII側より目録講習のeラーニング化への取り組みなど現在進行中の事業について補足説明があった。

[情報・ツールについての具体的要望]

  • 選書のための情報/人名・地名の翻字/いわゆる古籍(文書史料など)の書誌情報の確認の仕方(国会図書館アジア情報課)
  • アラビア文字言語の簡単な判別法など、アラビア文字を使用する言語についての必要最低限の知識を短期で身につけられないか(東大文学部)
  • トルコ語書籍の問題:「版」と「刷」の違いが判りにくい(東洋文庫図書部・大阪外国語大学)

その他の意見は以下の通り。

  • 職員の異動・減数の問題が深刻化し、殊にアラビア文字図書については自館での整理・目録作成に限界を感じている機関も少なからずある。個々の図書館・研究所に任せるのではなく、どこかでまとめてサポートしてほしい(同志社大学)。
  • 書誌入力を外注する場合の仕様書フォームがあると助かる(同志社大学)
  • NACSISにおいて(ローカルでは入力が進んでいる場合も)逐次刊行物の遡及入力が進んでいない。逐次刊行物についてもNIIへの登録方法の整備を望む(アジア経済研究所)。
  • 現地の出版状況や、著者名典拠、古典の簡単な解題などのツールの共有化、ポータルサイトを設置して欲しい(東大文学部)。

最後に、三浦徹室長が平成19年度のイスラーム地域研究東洋文庫拠点の活動方針として、アラビア文字資料の整理・利用状況についての国内関係機関へのアンケート調査の実施や入力支援ツール・講習会の提供を目標とする旨報告した。

文責 柳谷あゆみ(人間文化研究機構・東洋文庫研究部イスラーム地域研究資料室)

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