第13回「オスマン帝国史料の総合的研究」研究会(2011/10/23)

研究班「オスマン帝国史料の総合的研究」では、末期オスマン帝国の歴史家・法律家アフメト・ジェヴデト・パシャによる『覚書 (Tezakir)』の講読および翻訳作成を最終目的として、研究を進めています。

下記日程にて第13回研究会を行いました。

第13回研究会
[日時] 2011年10月23日(日) 13:30~17:30
[会場]東洋文庫7階会議室
[テキスト]ジェヴデト・パシャ『覚書 (Tezakir)』第1巻、62~69頁 (『覚書』手稿本と刊本の照合・翻訳読み合せ)
[担当者]佐々木紳・山下真吾

[概要]
今年度第6回目、通算第13回目の「オスマン帝国史料の綜合的研究」が10月23日(日)に開催され、6名が参加した。『覚書』下訳担当は、前回からの継続部分が佐々木、それ以降の部分が山下であった。今回より『覚書』では、オスマン帝国近代史にとって重要な意味を持つ改革勅令発布をめぐる出来事が扱われており、『覚書』第一巻も佳境に入ったといえよう。

今回は、テキスト中に登場する「ルーム」の訳語に関して、事前にメールでの活発な意見交換が行われた。特に上野、吉田両氏はオスマン帝国治下の非ムスリムを専門としており、東京在住ではないにもかかわらず見解を示してくれた。事前の意見交換と読書会における議論の中で、「東方正教徒」という訳語は自称ではないので避けるべきであることは共通見解として受け入れられた。「ギリシア正教徒」という訳語に関しては、1850年にコンスタンティノープルから分離した独立教会との関係から慎重に用いるべきだとの意見が出された。最終的に、今回は「正教徒」との訳語を暫定的に採用したが、今後さらに用例を検討していく必要がある。

また今回対象としたテキスト中に、『オスマン民法典(メジェッレ)』制定に関する一文があったのも興味深かった。東洋文庫拠点では『オスマン民法典』翻訳プロジェクトも行っていることから、『覚書』翻訳に際して『オスマン民法典』翻訳グループとの共同作業や意見交換ができるのではないかと思う。

佐々木、山下両氏の訳稿は質の高いものであり、検討はスムーズに進んだ。前回に引き続き、本会ではプロジェクタを用いた訳稿の検討を行っており、効率的な進行に大きく寄与した。なお、今後の翻訳をより整合性のとれたものとするために、組織や官職の訳語についての整理を進める必要がある。

次回は12月上旬に開催される予定であり、担当は山下および小笠原である。

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