USMARC等からNACSIS-CATに流用するときの注意点

USMARCなどの参照レコードからの書誌流用作成(コピーカタロギング)は便利な方法ですが、流用後にNACSIS-CATに対応させるための処理をしていない書誌レコードがしばしば見受けられます。流用の際の主な注意点を以下に挙げます。

1.その他のタイトルのコードを修正する

USMARCから流用したレコードでは、VTフィールド内の「タイトルの種類コード」がVTになっています。NACSIC-CATでは、別タイトルの情報をコードで著す必要があります。

出典:目録システムコーディングマニュアル 付録1.4 タイトルの種類コード表(http://www.nii.ac.jp/CAT-ILL/MAN2/CM/furoku1_4.html

コード タイトルの種類
AB
KT
1) 略タイトル(abbreviated title)
キータイトル(key title)
AT
BC
CL
CP
CV
DT
MT
OH
OR
PT
RT
ST
TT
2) 副標題紙タイトル (added title page title)
裏表紙タイトル (back cover title)
奥付タイトル (colophon title)
見出しタイトル (caption title)
表紙タイトル (cover title)
識別タイトル (distinctive title)
題字欄タイトル (masthead title)
その他のタイトル (other title)
原タイトル (original title)
親書誌タイトル (parent title)
欄外タイトル (running title)
背表紙タイトル (spine title)
標題紙タイトル (title page title)
RM
TL
UT
VT
3) ローマ字翻字タイトル (romanized title)
翻訳タイトル (translation of title by cataloging agency)
統一タイトル (uniform title)
異なりアクセスタイトル (variant access title)

多く用いられるのは、AT、BC、CV、OH、OR、STなどです。

このなかで、OH(その他のタイトル)は、資料に表示されているタイトルで、標題紙や上の表の2)のOH以外のどれにも該当しないものについて使用し、NOTEにその表示箇所を記録しなければなりません。

これに対して、3)のVT(異なりアクセスタイトル)は、次のように規定されています。(赤字強調は引用者による)

目録担当者が作成する、次の種類のタイトル標目。

  • ア) TRフィールドに記録されるタイトルの異形のうち、目録対象資料中に表示されていない形
  • イ) PTBLフィールドに記録される中位の書誌単位のタイトルの異形のうち、目録対象資料中に表示されていない形
  • ウ) その他必要と判断される任意のタイトル標目で、他のどのタイトルの種類にも該当しない形

例えば次のような形(目録対象資料中に表示されていない場合)がこれに該当する。

  • 完綴形に対するイニシャル形(あるいはその逆)
  • 頭字語形に対する展開形(あるいはその逆)
  • 頭字語形に含まれる省略のピリオドを取り除いた形
  • 検索の便宜上、語を補った形
  • 本タイトルから冠詞を除いた形、タイトル関連情報等
  • 漢字旧字体に対する新字体や異なる字形の漢字を用いた形
  • 異なるヨミを付与したもの
  • 他の「その他のタイトル」を加工した形
  • 通称・俗称
  • 任意の略称

異なりアクセスタイトルについては、コード「VT」を使用する。

簡単にいえば、資料のどこにも表示されていない形のタイトルを、カタロガーの裁量で記録した場合に、「VT」を用いるということです。

例えば、タイトルに2通りのヨミ(翻字)が考えられる場合や、より一般的な綴りが存在する場合などに、検索する人の便宜のために、別の形をVTに記録する場合などに用います。

従って、NACSIS-CATではOHやSTのコードで記録すべきものをVTのままにしておけば、それは間違った書誌ということになります。後からこの書誌に所蔵登録しようとする機関が必ず書誌調整をしなければならなくなりますので、VTのコードを正しいものに変えてやることを忘れないようにしましょう。

2.無著者名古典と聖典(と音楽作品)以外のUTLを削除する

UTL(統一タイトルリンク)は、例えば「アラビアン・ナイト」と「千夜一夜物語」のように、同じ作品に複数の名称が存在する場合や、「コーラン」と「クルアーン」のように表記の揺れが存在する場合に、それらを統一されたタイトルをもつ典拠ファイルにリンクさせることで、互いに関連づけるためのものです。

ただし、NACSIS-CATでは、1.無著者名古典、2.聖典、3.音楽作品に限って統一書名典拠レコードの作成を指示しています。

・統一書名典拠レコードの作成範囲は、当面、無著者名古典、聖典及び音楽作品とする。ただし、中国語図書については、当面、無著者名古典を含む古典、聖典及び音楽作品とする。

『目録情報の基準』9.2.1

つまり、上に挙げた千夜一夜物語などの無著者名古典、クルアーンなどの聖典のほかは、UTLフィールドの記入は不要ということになります。

それに対し、USMARCなどの参照レコードでは、古典でも聖典でもない資料について、翻訳書と原典を関連づけるためにUTLが使われていたりします。

参照ファイル中のレコードは本基準によって作成されているものではないため、参照ファイルからの流用入力に当たっては、本基準及び目録規則に合わせた修正が必要な場合がある。

例えば、参照ファイルからの流用によって得られる統一タイトル標目のうち、統一書名典拠レコードの作成範囲の基準に合致しないものについては、統一書名典拠レコードの作成はせず、書誌レコードのVTフィールド(その他のタイトル)への記録にとどめる。

なお、参照ファイルからの流用入力によって作成されたレコードと元の参照レコードとは、システム上は関連性はない。

『目録情報の基準』9.6.2

従って、利用者の検索の便宜のために、資料に記載されていないオリジナルタイトルや別タイトルを記載したいときは、VTフィールドで対応する、ということになります。

3.刊行中の多巻物の物理情報を修正する

参照ファイルでは、刊行が完結していない多巻物資料の刊行終了年が 1989-<1994 >のように書かれている場合がありますが、NACSIS-CATではそのようにせず、1989- のように開始年とハイフンだけ記入し、刊行が完結した時点で終了年を記録します。(コーディングマニュアル4.2.3H4)

同じくコーディングマニュアル4.2.3H4に挙げられた例から、数量部分が v. <1-2 > のようになっているものも、v. に直します。刊行が完結したことが明らかになった時点で、 3 v. のように修正します。

また、新しくない資料を受け入れしたときに、1巻だけが出版されて何年も経ってるなど、刊行が中止したと思われる場合は、数量を v. とせずに1巻のページ数を記録しておくとよいでしょう。刊行の中止が明らかになったときに再度ページ数を確認する手間が省けます。(英米目録規則第2版 2.5B22. 参照)

 4.アイン等の文字を修正する

NACSIS-CATでは、アラビア文字の運用当初から、アラビア文字のアインの翻字にはユニコード上の”Modifier Letter Left Half Ring”(U+02BF)、ハムザ(アリフ)には”Modifier Letter Right Half Ring”(U+02BE)を用いることが慣例となっていました。その後、米国議会図書館(LC)のほうで、”Modifier Letter Turned Comma”(U+02BB)、”Modifier Letter Apostrophe”(U+02BC)を用いるようになったため、混乱が起こっていました。2011年度のアラビア文字資料司書連絡会にて、NACSIS-CATの正規化システムの改良にあわせてこの点を議論し、て、NIIの方針とし従来通り02BF、02BEの”Half Ring”を用いることに決まりました。(参照:NACSIS-CAT/ILLニュースレター35号 (2012.6.29)

実際には、USMARCではハムザには”Modifier Letter Right Half Ring”(U+02BE)、アインには”Modifier Letter Left Half Ring”(U+02BF)を用いているものが多いようですが、02BBならば02BFに、02BCならば02BEに修正する必要があります。(ただし、修正しなかった場合でもNACSIS-CATおよびCiNii上では同様のインデクス処理を行っているため、検索には支障はありません。)

徳原靖浩

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