「シャリーアと近代:オスマン民法典研究会」第3回研究会(2008/12/06)
研究班「シャリーアと近代:オスマン民法典研究会」は、オスマン民法典(メジェッレ)のアラビア語訳の講読および翻訳作成を最終目的として、研究を進めていきます。
下記日程にて第三回目の研究会および会合を行いました。
[日時] 2008年12月6日(土) 13:00~18:00
[会場] 東洋文庫イスラーム地域研究資料室
会場アクセス ※東洋文庫本館とは別建物です。ご注意下さい。
[道順]駒込駅から本郷通りを六義園方面へと直進し、ampmを通過したあたりにあるビルです。
1階に日本直販が入っています。
入口は、建物の右側裏手にあります。やや判りにくいので、迷われたときには事務所までご連絡下さい。
[報告] メジェッレ翻訳案 第17条~第50条
[担当] 堀井聡江氏
[概要]
12月6日、第3回研究会が東洋文庫イスラーム地域研究資料室において開催され、計10名が参加した。今回は前回に引き続き、大河原知樹氏(東北大学)が進行役を務め、堀井聡江氏(桜美林大学)が作成した翻訳案(第17条から第50条)の検討作業が行われた。
作業の中では、今後の翻訳作業にも関わる二つの大きな問題が検討された。一点目は、アラビア語の動詞の翻訳の問題である。単語のアラビア語の原義に基づきつつ、如何にして自然な日本語へ翻訳するかが問われ、参加者による意見の交換が行われた。
二点目は、専門用語の訳語の選定、及びその意味内容の理解についてである。具体的には、「準拠muḥakkamah」、「慣行ʻādah」、「通念maʻrūf」、「従物tābiʻ」の訳語の如何や、「不可避性ḍarūrah」と「緊急性iḍṭirār」の間の意味上の差異等について、議論が交わされた。訳語の選定においては、日本の法律学においてその訳語が使用されている場合に、イスラーム法上の意味と大きな相違があるか否かが確認された。例えば、日本法における「従物」と、イスラーム法におけるtābiʻの射程距離が異なる点が指摘された。
専門用語の理解とその訳語の選定においては適宜マジャッラの注釈が参照されたが、「不可避性ḍarūrah」と「緊急性iḍṭirār」の違いに関しては、参加者全員の明瞭な理解とコンセンサスが導き出されずに終わった。今後そのような場合は、ハナフィー法学派一般におけるその用語の使用法を、マジャッラにおけるその使用法との差異の存在の可能性に留意しつつ考慮することも、有効な打開策を見出すための一つの手段となるだろう。
今回を持って、堀井氏の担当分(第17条から第50条)の翻訳の検討が終了し、次回より磯貝健一氏担当箇所に入ることになる。
文責 松山洋平(東京外国語大学大学院地域文化研究科博士前期課程)
(2008年12月15日更新)