「シャリーアと近代:オスマン民法典研究会」第2回研究会(2008/10/25)
研究班「シャリーアと近代:オスマン民法典研究会」は、オスマン民法典(メジェッレ)のアラビア語訳の講読および翻訳作成を最終目的として、研究を進めていきます。
下記日程にて第二回目の研究会および会合を行いました。
今後も、関心をお持ちの方はどなたでも奮ってご参加ください。
[日時] 2008年10月25日(土) 13:00~18:00
[会場] 東洋文庫イスラーム地域研究資料室
会場アクセス ※東洋文庫本館とは別建物です。ご注意下さい。
[報告] メジェッレ翻訳案 第1条~第16条
[担当] 堀井聡江氏
10月25日、第2回研究会が催され、本格的な翻訳作業が始まった。今回の出席者は、オスマン朝史・オスマン語の専門家3名、イスラーム法・アラビア語の専門家5名、日本法・比較法学の専門家2名である。大河原知樹氏(東北大学)が進行役を務め、発表者の堀井聡江氏(桜美林大学)が準備した翻訳案に基づき、参加者全員で細部にわたる丁寧な検討を行った。
どうすれば、原文の簡潔な文体を保ったまま、内容を正確に伝えられるか。これが最も難しい問題であった。妥協策として脚注を付すことが提案された。片仮名をどの程度用いるかについても話し合われた。オスマン語の原典では日常的な表現が用いられているとの指摘があり、日本語の法文としての体裁をどう整えるかという課題が見つかった。できるだけ能動態を用いるべきであるとの意見が出た。
日本法の専門家からは、al-muʻāmalātを対人的法律関係と訳すことによって債権債務関係と誤解される可能性、匿名組合と民法上の組合の相違、「見なす」と「推定する」の区別の必要などについて指摘があった。
訳語の問題の他、第5条に関連してイスティスハーブ(判断の存続)、第15条に関連してキヤース(類推)やイスティフサーン(選好)など、ウスール・ル=フィクフ(基礎法学)の理論について堀井氏による解説があり、学ぶところの多い研究会であった。
今回で、イスラーム法学の定義とその分類についての説明(第1条)、意図の重要性に関する一般原則(第2条と第3条)、確信と疑念、原状の継続と変化、明文とイジュティハードなどに関する一般原則(第4条から第16条まで)が一応検討済みとなった。当初は第50条まで進む予定であったが、予想以上に議論が白熱し、第17条以降は次回に持ち越された。
文責 浜本一典(同志社大学神学研究科博士前期課程)
(2008年11月9日更新)